プロ野球の阪神タイガースは2005年以来、18年ぶり6度目のリーグ優勝を果たした。野球解説者の江本孟紀さんは「前回の優勝から18年も経ってしまったのは、監督交代のたびに大騒ぎする『お家騒動』を繰り返してきたからだ。私は歴代オーナーの責任が大きいと思う」という――。(第2回)

※本稿は、江本孟紀『阪神タイガースぶっちゃけ話 岡田阪神激闘篇』(清談社Publico)の一部を再編集したものです。

18年ぶりのリーグ優勝を決め、胴上げされる阪神の岡田彰布監督(=2023年9月14日、甲子園)
写真=時事通信フォト
18年ぶりのリーグ優勝を決め、胴上げされる阪神の岡田彰布監督(=2023年9月14日、甲子園)

阪神で監督問題が毎回のように起きるワケ

阪神が低迷するたびに起きている「お家騒動」。阪神のお家芸などといわれ、もはや伝統芸能の域に達した感があるが、監督が交代するときには一事が万事、大騒動に発展していくことが多い。

ここ15年くらいでいえば、岡田から真弓に代わった2008年、真弓から和田に代わった2011年、金本から矢野に代わった2018年、矢野から岡田に代わった2022年あたりは監督人事で風雲急を告げていた。

12球団のなかでも、とくに阪神は熱烈なファンが多いがために、「監督が代わること」が、わが身に起きた不幸とばかりに受け止める者も少なくない。球団、そして阪神電鉄本社内では、監督の交代は「よくある人事のひとつ」だと捉えていても、ファンは「いったい、タイガースはこの先、どうなってしまうんや⁉」などと悲観的に捉えられるために、結果的に「お家騒動」などといわれてしまう一面があるのも事実だ。

つまり、ファンが静観していれば、「そこまで騒ぐほどのことか」と思えてしまうケースだって過去にはあったはずだ。とはいえ、阪神の監督が契約期間を残して退任するケースが相次いでいるのも事実だ。その根本となる原因は、どこにあるのか? 答えは二つある。

早期に続投を宣言することの弊害

ひとつは、「シーズン途中に早々とオーナーが監督の続投宣言をしてしまうこと」だ。たとえば、オールスター前までの前半戦を2位、もしくは3位で通過したとする。Aクラスで折り返すのだから、チームとしては健闘したという評価になる。これはまだいい。

そこで、「前半戦をAクラスで頑張ってくれたのだから、後半もボチボチやってくれるだろう」という期待値を高く設定し、「監督続投」をオーナーみずからメディアを通じて高らかに宣言する。2021年は9月18日に明かしている。

すると、これを受けてチーム内で起きてしまうのが、二つ目の原因の「選手たちの緊張感がゆるんでしまう」ことにつながっていく。

監督が続投するということは一軍の首脳陣、さらには二軍監督を含めた二軍の首脳陣も大幅に刷新されるようなことは、ほぼない。翌シーズンもユニホームを着続けられるか微妙なボーダーライン上の選手はいるにしても、それ以外の大方の選手たちは、「来年も阪神のユニホームを着て現役を続けることができる」という安心感から、自分を追い込むほどの練習をしなくなる(もっとも、それ以前から自分を追い込む練習をしている選手がどれだけいるのかは疑問だが)。