もちろんお金はあったに越したことはないですし、いらないなんて気持ちはないですけど、ただ今の自分に、その金額が見合うかと言えば、僕はあまりピンとこない 『道ひらく、海わたる』
大谷翔平が2024年1月、ドジャースとの間で結んだ10年7億ドルの契約は、北米のプロのアスリートとしては史上最高額であり、日本円に換算すれば1000億円を超えるということで大きな話題になりました。
1995年、野茂英雄がドジャースとマイナー契約を交わした時の契約金は200万ドル、年俸はわずか10万ドルという驚くべき安さだったことを考えると、大リーグにおける日本人選手への評価がこの30年で劇的に変わったことがよく分かります。実際、同じく2023年12月に山本由伸は12年3億2500万ドルという投手としては史上最高額の契約を締結しています。
いずれも日本のプロ野球界では考えられない金額だけに、若い日本人選手が「いずれ大リーグで」と考えるのは当然のことと言えます。とはいえ、大谷が最初に大リーグのロサンゼルス・エンゼルスと交わしたのは契約金230万ドル、年俸約54万ドル(メジャーリーグの最低年俸)という破格の安さでした。
当時、メジャーでは労使協定により25歳未満の海外選手(大谷は23歳)は契約金の上限が決められていたため、これほどの安価な契約になったわけですが、あと2年待てば確実に数億ドルの大型契約が結べるにもかかわらず、あえて最低年俸でのメジャーリーグ移籍を選んだことは大きな話題になりました。
「なぜ大金を棒に振ってまで」という声に対し、大谷は「お金よりも今やりたいことを優先したい。たまたま優先したいものがあったということなんです」と、大金を手にすることよりも、メジャーでプレーするという「やりたいこと」を選んだ、これは何ものにも代え難いんですと話していました。お金に無頓着だったわけではありません。こんなことも言っています。
「もしも2年待てば一生安泰ぐらいの金額を貰える可能性はあるかもしれません。親のこととかを考えれば。もちろんお金はあったに越したことはないですし、いらないなんて気持ちはないですけど、ただ今の自分に、その金額が見合うかと言えば、僕はあまりピンとこないので、それよりも今やりたいことを優先したい」
優先すべきは「お金」よりも「大リーグで戦うこと」でした。大谷の姿勢はメジャーの選手からも「彼はお金のためにアメリカに来るのではないと示したんだ。野球をやるためだけに来るのさ」と好意的に受け止められ、アメリカのファンからも歓迎されました。
ワンポイント:「お金のため」がすべてではない。もっと大切なことがあると知ろう。