名古屋に昨年できたばかりの小さな弁当店が注目を浴びている。地元の人以外に支持しているのは、芸能人やスポーツ選手など健康志向の人。北海道や沖縄、東京在住者もわざわざ買いにくるほどの大繁盛だ。なぜなのか。フリーランスライターの野内菜々さんが店長の岡村菜穂子さんを取材した――。

なぜ、名古屋の小さな弁当店が人気爆発しているのか

「今日は、(テレビの)ロケ現場に50個配達してきました」

「みちのり弁当」(名古屋市西区)の店長・岡村菜穂子さん(54)は満面の笑顔で語る。

「みちのり弁当」(名古屋市西区)の店長・岡村菜穂子さん
撮影=野内菜々
「みちのり弁当」(名古屋市西区)の店長・岡村菜穂子さん

黒酢チキン南蛮弁当、鰆の西京焼き弁当、米粉の唐揚げ弁当……。いずれもおいしそうなラインナップだが、一見普通のお店に見える。だが、市内で飲食店を展開する会社テマトジカンが2023年1月にオープンして以降、大口の注文が頻繁に入るようになった。

店は繁華街ではなく、市内の住宅街にある。築60年の一軒家の1階をリノベーションし、厨房は5.5坪とかなり手狭だが、日々着実に利益を生み出している。周囲に弁当店がないわけではない。価格は平均1250円と周辺店の平均500円に比べ2〜3倍と高額だ。それにもかかわらず、1日最大150個が完売するなど飛ぶように売れている。客は地元の人だけではない。

「ご近所の方はもちろん、テレビ番組などに出演する俳優やタレントさん、スポーツ選手の他、わざわざ北海道や沖縄など遠方から訪れるお客さまもいらっしゃいますし、最近は外国人観光客も情報を聞きつけて買いに来てくれます」(岡村さん、以下同)

オープンから1年半、後発で不利な立地にもかかわらず、近いうちに東京上陸を視野に入れているというほどの順調なスタートを切れたのはなぜか。取材をすると、岡村さんがオープンまでに何度も大きな挫折に襲われつつもそれを乗り越えたからこそ見い出せた大繁盛の法則があった。