インスタグラム毎日投稿、1.4万人のフォロワー獲得

岡村さんは目標を公言するようになる。しかし、特に飲食店に関わる人たちからは「名古屋では絶対に無理」と鼻で笑われた。過去に店をひとつ廃業に追いやった黒歴史も足を引っ張った。

それならばと長期目線でとらえて、構想段階から“思い”を発信しよう。未来を見据えた集客に繋げるため、SNSでの発信力を加速させるべく奮起した。

まず、個人で大人の小麦アレルギーの人限定のコミュニティをオンライン上につくった。次に全国にあるグルテンフリーの食情報を毎日投稿した。

グルテンフリーの”地味”で”美味しくない”イメージを一新するため、雑誌のようなおしゃれなデザインを意識した。紹介する商品は岡村さんが本当に美味しいと思うものだけ。実際に訪れた店数は300軒以上、投稿数は500件を超え、フォロワーは1万4000人に達した(2024年8月現在)。

「みちのり弁当」(名古屋市西区)の店長・岡村菜穂子さん
写真提供=株式会社テマトジカン
成功も失敗もフルオープンの岡村さんの姿勢に、ファンやフォロワーは全幅の信頼を寄せる。

コンタミネーションを徹底排除する当事者目線の店舗設計

小麦アレルギー発症から5年の2022年、ついにグルテンフリー専門店(みちのり弁当)のオープン実現に向けて動き出す。ニッチな分野でも会社が最終的にGOサインを出したのは、5年間の日々の仕事への熱心な取り組みと、ブランディング・マーケティングを継続的に勉強し、SNS集客スキルも身につけたことへの評価からのことだった。

事業内容は、コロナ禍の情勢下と他店との差別化を図るため、テイクアウトの弁当店に決定した。テナント料金は都心に比べて3分の1、厨房の広さは5.5坪と、固定費や光熱費を抑えた。

徹底したのは、麦類の排除だ。店で売る弁当の揚げ物やスイーツ(どら焼きなど)は小麦粉ではなく米粉を使う。グルテンフリー=「美味しくない」「パサついて味がない」「地味」といった印象が、根強い。だからこそ「誰が食べても美味しい弁当づくり」にこだわった。

調味料も小麦不使用のものにして、メリハリある味付けを意識する。肉魚のメインおかずは作り置きをせず、注文が入ってからその都度スチームコンベクションで焼き上げるから、肉質がふっくら柔らか。米粉の唐揚げは1粒が大きく、衣は、カリカリ肉質はジューシーで食べ応えがある。

加えて、弁当製造の際に麦類(小麦、大麦、ライ麦、オーツ麦)が入り込まないよう厳重管理した。調理機器は成分付着を避けるため、すべて新品で揃えた。岡村さんは当事者だからこそ、食への安心安全要素に手を抜くことはしない。