「原発政策」も次の政権に託された

原発については「重要なベースロード電源」という位置付けで「安全性が確認されたものから再稼働する」というのが自民党政権のこれまでの見解だったが、一方で「原発依存度を下げる」という目標も掲げている。

ところが岸田首相は昨年、これまで「タブー」として封印されてきた「原発の新増設」について検討するよう指示。産業界などが求めてきた「原発拡大」に舵を切る姿勢を見せた。現在、原発の稼働期間の延長などを行っているものの、新増設に踏み切らなければいずれ原発はゼロになる。どこかのタイミングで、廃炉になる原子炉を作り替える「リプレイス」も含めた「新増設」を行うことが必要になるが、安倍晋三内閣や菅義偉内閣はその議論自体を封じてきた。国民を二分する議論になることが分かっている難題には踏み込まない、という姿勢だった。

そこに岸田首相は果敢にも挑んだわけだが、これも、岸田氏自身が決着したわけではなく、次の首相に託されることになった。まずはエネルギー基本計画に原発の「新増税」を書き入れることになるのかが焦点だが、これも解散総選挙を戦うことになる次の首相にとっては大きな足かせとなる。

賃上げが物価上昇に追いついていない

そして最大の問題が「物価高対策」だ。

岸田首相は就任以来、「物価上昇を上回る賃上げ」を掲げ続け、物価上昇は容認する一方で、賃上げを誘導すれば、それがデフレから脱却することにつながる、という見方を取り続けてきた。円安による輸入物価の上昇が国内消費者物価も押し上げ続けているが、岸田首相は「円安容認」とも言える政策を取り続けてきた。

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典型は、ガソリン価格や電気・ガス料金への補助金で、すでに予算の累計額は11兆円超にのぼっている。こうした補助金によるエネルギー価格の引き下げは、国の財政を悪化させるという見方につながることから、さらなる円安につながることになる。もちろん、円安が進めば、さらに円建ての輸入物価は上昇するから、庶民生活を直撃することになる。そこで、賃上げが重要なのだが、いつまで経っても物価上昇に追いつかず、本格的な実質賃金の増加につながっていない。