異色の存在となった公明党の新代表
9月28日の公明党党大会で新しい党代表に就任した石井啓一氏(衆議院議員)は、公明党の歴史のなかで特筆すべき存在となる。それは何かというと、彼が元官僚だったということにある。
今の国会議員のなかで官僚出身者など珍しくもないが、「公明党の代表」となると、少し話が異なる。まず、前任の山口那津男氏は弁護士出身。その前の太田昭宏氏は、もともと公明党の母体である新宗教団体・創価学会の青年部長を務めていた人物で、「創価学会のプリンス」などとも称されていた、すなわち“バリバリの宗教活動家”だった。さらにその前の神崎武法氏は検察官だったが、いわゆる行政官僚ではなかった。
その前の浜四津敏子氏、藤井富雄氏(公明党が「公明新党」と「公明」に分裂した際に、公明代表に就任)、石田幸四郎氏、矢野絢也氏、竹入義勝氏らともなると、これまた創価学会のバリバリの活動家出身で、学会のカリスマだった故・池田大作名誉会長の側近のようなことをしていた人物も、多々含まれる。
一方で石井啓一氏は1958年、東京都に生まれ、東京大学を経て旧建設省に入省。十数年の官僚暮らしを経て93年に公明党の衆議院議員となり、現在に至るという人物である。創価学会の中央よりも、“国家の中枢”の何たるかをしっかりこの目で見てきたことのある存在で、そしてその種の政治家(官僚出身者)が公明党のトップとなったのは、これが初めてのこととなる。
すでに述べたように、公明党とは創価学会を母体とする、紛うことなき宗教政党である。
しかし、その学会のカリスマ・池田大作氏が世を去った後、公明党はそのトップに“宗教活動家”ではなく、初の官僚出身者を就けた。この意味するところはやはり、これからの創価学会・公明党が、「一人の絶対的カリスマによって率いられる体制」から、そのあり方を変えようとしている、ということではないのだろうか。