背景に「野田vs.枝野」の権力闘争

具体的には、泉氏の推薦人に名を連ねる鬼木誠氏や柴慎一氏、道下大樹氏などがサンクチュアリ出身で、吉田氏の推薦人になった奥野総一郎氏、小西洋之氏、谷田川元氏が花斉会出身だ。

また、野田氏への支持を表明していた玄葉光一郎氏も吉田氏の推薦人となり、フェイスブックで「政権交代を見据え、総理に必要な胆力、見識、人間性を備えた野田元首相を支持します」としながらも「他方、泉現代表や女性・若手候補による幅広い論戦を国民に示す代表選にしなければなりません。告示が迫る中で、吉田晴美さんの陣営から繰り返しの要請を受け、代表選の構図全体を考えて推薦人になる判断を本日致しました」と内情を綴った。

立憲関係者は「代表選で闊達な議論を演出するために野田氏と枝野氏が推薦人を融通した」と語るが、実情はそう単純ではない。

「2人とも決選投票を見据え、推薦人の貸し出しによって他陣営に恩を売った形だ。今のままの情勢で代表選が推移すれば、決選投票は野田氏と枝野氏の戦いになるだろう。そのときに、議員票を1票でも多く稼ぐために、野田陣営は吉田陣営を、枝野陣営は泉陣営を味方に引き入れようとしている」(立憲中堅議員)

野田氏による「リベラル派分断工作」

立憲代表選の第1回投票は国会議員と国政選挙の公認候補予定者が合計370ポイントを持ち、地方議員、党員や協力党員の投票も同じ370ポイントに圧縮され、合わせて740ポイントを争う。

一方、第1回投票で誰も過半数を得なかった場合は決選投票にもつれ込み、国会議員と公認候補予定者の投票はそのままであるのに対して、地方議員や党員の票は都道府県連の47ポイントに置き換わる。

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つまり、決選投票は国会議員の味方をどれだけ集められるかが勝負になり、野田陣営も枝野陣営も先を見据えて推薦人を貸し出したというわけだ。

それを裏付けるような証言も出ている。

野田氏周辺の立憲関係者は「花斉会(野田グループ)には泉陣営からも推薦人を融通するよう依頼が来ていたが断っていた。泉氏が立候補すると立憲内の保守層が野田氏と割れて不利になってしまうという見立てからだ。一方で吉田氏に推薦人を貸して立候補させたのは、党内のリベラル層を分裂させようという狙いがある」