和牛のような肉でも「和牛」と表示できない交雑種

「国産牛肉」と表示されている肉の多くは、乳牛であるホルスタイン種などです。おすのホルスタイン種は乳を出さないため、去勢したのち、肉用牛として育てられ、肉の供給に使用されます。

この肉は、「輸入牛肉」と同様に、脂肪含量や脂肪交雑が少ない特徴があります(図表1)。

また、黒毛和種の肉のように脂肪交雑を多くするため、ホルスタイン種のめすと黒毛和種の雄とを交配した交雑種が肥育されています。

この交雑種の肉は黒毛和種の特徴も持ちますが、農水省のガイドラインによる和牛の定義からはずれているため、「和牛肉」とは表示できず、「国産牛肉」の位置づけとなります。

黒毛和種や褐毛和種などの「和牛肉」とホルスタイン種などの「国産牛肉」を食べ比べて、牛肉のおいしさの特徴を楽しんでみてください。

「熟成」するとなぜおいしくなるのか

皆さんは、「熟成」という言葉から、長く保存すればするほど食べ物がおいしくなると思っていませんか。「食品の熟成」は、食品やその素材を、適した条件で一定期間保存し、食べ物の品質をよくする処理のことを指します。

食品の種類によって、熟成の条件や保存期間は違います。肉は、と殺後、通常0~4℃で、鶏肉では1~2日間、豚肉では5~7日間、赤身主体の牛肉では10~14日間保存するのが適しているといわれています。黒毛和牛の肉は2カ月間熟成する場合もあります。

肉は低温で保存していると少しずつ肉質が変化し、死後硬直した筋肉がやわらかくなります(図表2)。

また、たんぱく質が徐々に分解され、うま味物質であるグルタミン酸などの遊離アミノ酸が増えます(図表3)。

もう一つのうま味物質であるイノシン酸も、熟成中にATP(生命活動時に使われるエネルギー物質)が分解されて増えます。さらに、熟成した肉では遊離アミノ酸や糖が増えるので、加熱によるメイラード反応で肉特有の香ばしい香りが多く発生します。

これが、肉を熟成させるとおいしくなる理由です。これらは肉で起こる一般的な現象です。しかし、動物の飼育条件により、調理しても、異なる味わいになるので、いつも同じおいしさが味わえるわけではありません。

なお、スーパーで肉を買った場合、流通過程ですでに熟成されています。自宅の冷蔵庫でさらに熟成させてもっとおいしくなるわけではありません。

肉を長く保存すると、細菌が増えて腐敗臭が発生したり、肉の脂肪が酸化してすっぱい酸化臭が出てきたりします。肉を食べる前には、ぜひ調理前の肉のにおいも気にかけながら調理してください。