日本でもオムニチャネル復活の可能性は十分ある

日本とアメリカでこのような差が生まれているひとつの理由が、アメリカでは宅配便がそれほど便利でも安価でもないという事情です。日本のようにヤマトと佐川と日本郵政があって翌日に自宅に確実に届くというわけではないし、アマゾンプライムの年会費も日本よりも桁違いに高いのです。そのことからアメリカの庶民レベルの消費者はネットで注文してウォルマートで受け取るほうが早いと考えているのです。

一方でインターネット通販が大成長した日本ではオムニチャネルはオワコンなのかというと、実は最近の事情はそうでもありません。2024年問題で運送業界全体の運送キャパシティに限界が来ている関係で、この先はインターネット通販のコストがさらに値上がりしていくと予想されるのです。

その事情から近い将来、オムニチャネルがまた復活する可能性が十分にあります。宅配コストが上昇して、消費者が今のようには配送料無料を楽しめなくなる未来を想像すると、その上昇したコストでこれから有利になるビジネスモデルがふたつ考えられます。

1 家まで配達するのではなく、店舗までの大口配送に載せることで物流コストを節約する
2 店舗までの大口で配送された商品を、自宅まで配達してもらうことで物流コストを節約する

前者がBOPIS(buy online, pick-up in store)というビジネス形態で、後者がいうまでもなく7NOWのような宅配サービスです。

写真=iStock.com/RistoArnaudov
※写真はイメージです

セブンがチャレンジを続けている本命はオムニチャネル

セブン‐イレブンがこのようなオムニチャネルビジネスに投資を始めてもう20年の歳月がたつはずです。そう考えると長い長い年月がたったように感じますが、実は企業の新規事業が育つまでにはそれくらいの年月は普通に覚悟すべき長さでもあります。

その間に消費者の意識も変わり、技術も進化し、経済の構造も変化するため「いつかその日がくるはずだ」と信じて超長期の投資をしてきた事業がついに花開く日がくる。そういったことを大企業の経営者はなんどもなんども経験しています。

このように説明すると、セブンの宅配ピザ参入について3つめの理由がはっきり理解できることと思います。ピザ参入はあくまでひとつの打ち手であって、セブンが執念をもってチャレンジを続けている本命は、ビジネスチャンスがオムニチャネルに広がる未来だということなのです。

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