「ネットとリアルの融合」が理想的な形で具現化

2017年秋、ニューヨーク。私は書店「アマゾン・ブックス」やアマゾン傘下のスーパーマーケット「ホールフーズ」を視察した。

2017年5月、ニューヨークに進出したアマゾン・ブックス。アメリカ国内で7店舗目になる。(EPA=時事=写真)

アマゾン・ブックスではすべての本の表紙を正面に向ける「面陳」をしている。書棚もユニークで、「ネットで評価が高い」「ニューヨーク地域で売れている」「3日で読める」などの切り口で本を並べていた。

一般的な書店の陳列方法である「背差し」に比べて、店舗で持てる在庫は減る。しかしアマゾンにとって、在庫は物流センターにあればよい。Eコマースのサイト上には、幅広い種類の在庫を揃える一方で、リアル店舗には売れ筋商品や手に取りたくなる商品を置くことで、魅力的な空間をつくる。そこには、私が長年目指していた「ネットとリアルの融合」が理想的な形で具現化していた。

リアルからネットに進出するほうが早い

さかのぼること同年8月、アマゾンは「アメリカでもっともヘルシーな食料品店」と呼ばれる高級スーパー・ホールフーズを買収している。これもネットとリアルの融合を象徴する出来事だった。近年、営業利益と既存店売上高が減少していたホールフーズだったが、活気が戻り、同年8月末に来店客数は前年同期比25%も増加。さらにアマゾンは18年2月、ホールフーズが扱う生鮮食品を含めた商品の販売を、プライム会員向けのネットスーパーで開始した。当初は4都市だが、年内に提供地域を拡大する計画だ。

私は1999年にソフトバンクグループのヤフーの傘下で、書籍のネット販売を手掛ける「イー・ショッピング・ブックス(現・セブンネットショッピング)」を起業した。アマゾンは、ほぼ同時期の2000年に日本に進出している。アマゾンのビジネスは当初、書籍販売が中心であったため、当時からライバルとして動向を注視していた。

その後、徐々に業容を拡大し、家電なども扱うようになっていったアマゾンの動向を見るうち、こう考えるようになった。

「ネットとリアルを融合させ、店舗と連携する形でビジネスをしないとアマゾンには勝てない」

さらに「ネットからリアルに進出するより、リアルからネットに進出するほうが早い。リアル店舗を多く持っている企業のほうが強いはずだ」と判断して、ソフトバンクグループからセブン&アイグループへと資本移動した。今振り返ると、前者の読みは正しかったが、後者の読みは間違っていたと言わざるをえない。