73歳の総裁任命は「最高齢」の異例ずくめ
日本銀行の黒田東彦総裁が再任して、2018年4月9日から第2期「黒田日銀」がスタートを切った。日銀総裁が5年の任期を超えて続投したのは、戦後3人目で57年ぶり。73歳の総裁任命も最高齢だから、異例ずくめの再任だろう。
振り返れば最初の就任は、第二次安倍内閣になって間もない、2013年3月のこと。いわゆる「アベノミクス3本の矢」で、第1の矢である「大胆な金融緩和」を担ったのが黒田新総裁だった。このとき掲げたのが「2年間でマネタリーベース(流通現金+日銀当座預金)を2倍にし、年2%の物価上昇を実現する」という目標だ。
デフレからインフレに転じれば企業収益が増え、賃金が上がり、消費が活発になって日本経済は復活するというシナリオである。そのため日銀は、国債やETF(上場投資信託)を買い入れ、マネタリーベースを増やしていった。すると前年に1ドル80円を切る極端な円高だったのが、就任の翌々月には100円台を突破。この円安によって輸出産業を中心に企業の業績はアップし、株価が上昇するとともに雇用も拡大した。
「見事なロケットスタート」と賞賛されたが……
こうして「黒田バズーカ」は「見事なロケットスタート」と賞賛された。しかし、あの円安はアベノミクスの成果というより、海外経済が好転した恩恵が大きかったと見るべきだろう。特に幸運だったのは黒田総裁の就任後、米国の中央銀行であるFRBが量的金融緩和策(QE3)の縮小、つまり金融政策の正常化を示唆したことだった。またギリシャ危機を引きずっていたヨーロッパもユーロ安が止まって、最悪期を脱出。円安に向かいやすい相場の状態が生まれていたのだ。
その流れを受け、黒田日銀のシナリオ通りに物価上昇は見え始めた。円安になったことで輸入物価が上昇し、さらに当時は原油価格が上昇していたので、それだけでも一定の物価上昇が期待できる。また14年4月に実施された5%から8%への消費増税の直前までは駆け込み需要が高まって、商品の値段が一時的に下がりにくくなった背景もある。