5年前を繰り返す人事の構図

インフレ目標は未達でも、そういった政策が継続されるほうが安倍政権にはありがたいようだ。日銀の新しい副総裁2名には、日銀プロパーとリフレ派の学者が就任した。これは5年前と同じ構図であり、政権の「今までの延長でやってほしい」の意図が伝わってくる。

中曽氏と雨宮氏は日銀プロパー。岩田氏と若田部氏は「リフレ派」と目される。リフレ派とは、中央銀行が世の中に出回るお金の量を増やし、インフレ期待を高めることでデフレ脱却を図ろうとするマクロ経済政策の支持者。

それでも、ここ1年は世界経済が順調だったおかげで日本経済も落ち込むことはなかった。しかし現在はトランプ米政権による貿易戦争や米ハイテク産業の株価が不安定になっていることで、リスクは高まっている。長期的には、20年以降は世界経済の落ち込みが予想され、東京五輪のあと日本経済の減速感は相当に高まる恐れがある。

庶民の生活を直撃する黒田日銀の「5大リスク」

黒田日銀は2期目も引き続き、インフレ率2%を目標に掲げた。しかし今後の展望に明るい材料は見当たらない。それどころか予想されるリスクが5つほどある。

まず、次の世界経済の不景気がきたとき、打つ手がないことだ。現在、国債の金利にこれ以上の下げ余地はない。景気の落ち込みによって海外の中央銀行が金利を下げれば、強烈な円高に向かいやすい。それにつられて株価も下落するだろう。

第2のリスクが、超低金利が続くことによる、金融機関の経営の圧迫である。この状態が長く続いたら、経営が困難となる金融機関が増加し、世の中のお金の巡りはかえって悪化する恐れがある。

第3のリスクを招くのは、日銀のETF買い入れだ。すでに日銀が大株主となった企業もある。しかし、日銀が買い入れをストップした瞬間に株価が暴落するリスクもあって、やめるにやめられない。「株価を歪めている」と海外の投資家が日本株から離れる現象も起きている。