偏差値だけで志望校を選んではいけない

――中学受験において志望校はどのような基準で選ぶべきでしょうか。

志望校選びで最も大切なのは、偏差値の高さや進学実績ではなく、子どもと志望校の校風との相性です。校風が合っていないと、せっかく努力して合格してもさきほども紹介したように心身に不調をきたしてしまう場合もあります。

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私が知っているお子さんは、小学受験から親御さん主導で名門校に通っていました。中学受験でも偏差値70超えの難関校に合格したのですが、その学校は楽器を弾くことが好きだったりアニメが好きだったりと、とてもおとなしい生徒が多い穏やかな校風なんですね。

ですが、お子さんは活発に体を動かすのが大好きで、ちょっと羽目を外すくらいの遊びを好む……と、学校の校風と明らかに合ってなかったのですが、親御さんはそうした視点はまったく持ち合わせていなかったようです。

お子さんは夏休み明けから学校に行けなくなり、最終的には退学してしまいました。その後は公立中学に通い始めますが、やはり不登校になってしまい、「お前のせいで俺の人生はめちゃくちゃになった」と親御さんに罵詈雑言を浴びせたそうです。

学力ではなく校風との相性を考えるべき

――志望校選びをするうえでは、偏差値と同じくらいかそれ以上に校風も重要なんですね。

学校に通えなくなってしまっては元も子もありませんからね。子どもの幸せを本当に願うなら、子どもが楽しく通える学校を探すべきだと思います。

私立中学を受験する場合は「建学の精神」を確認します。「建学の精神」では、その学校がどのような理念に基づき、子どもたちをどう育てていくのかを世間に対して謳っているので、各学校が目指す方向性はある程度把握できるでしょう。そのうえで、オープンキャンパスや学校説明会に参加すると、そうした理念が体現できているかを自分の目で確認できます。

志望校選びをする際は、学校の校風を調べたうえで、お子さんを日頃からしっかり観察し、本人との相性を見極めていただきたいですね。

最初から偏差値を重視する親は少ない

――そもそもなぜ、親御さんは偏差値ばかりを重視してしまうのでしょうか。

お話を聞いていると、最初から偏差値を重視していたという親御さんはそれほど多くないんです。子どもの受験を応援していくなかで、ママ友や塾の先生たちの影響を受けていくケースが多い印象があります。

多くの親御さんはまず、周りのママ友から「中学受験をするのが当たり前」というお話を耳にするんですね。それで塾を探し始めて説明会に足を運んだ結果、塾の先生たちが親御さんを“洗脳”していくというパターンです。

某有名塾の成績優秀者が集まるクラスでは、テストの点数順に席順が決められて、子どもの競争心が煽られます。テストを終えるたびに子どもたちが「お前、俺より点数が下がったな」などと言い合う光景も珍しくないようです。