子供を学習塾や英会話教室に通わせれば、頭のいい子に育つのか。『子どもの隠れた力を引き出す 最高の受験戦略 中学受験から医学部まで突破した科学的な脳育法』(朝日新書)を書いた小児科医の成田奈緒子さんは「ハードな塾通いで不登校や体調不良を訴える子供を数多くみてきた。幼少期から英語を学ばせることが、かえって子供の脳の発達を妨げることになる」という。成田さんへのインタビュー(前編)をお送りする――。(構成=文筆家・佐々木ののか)
親に注意されている小学生
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受験で“壊れる”子どもたち

――本書では、毎日のハードな塾通いによって心身を壊してしまう子どもの事例が紹介されています。子どもたちにはどのような症状が出るのでしょうか。

受験にあたって不適応を起こし、髪の毛を抜いてしまったり、手を洗い続けないと気が済まなかったり、塾に行こうと思うと下痢が止まらなくなったりと、不登校や体調不良などの症状を訴える子どもをこれまでにたくさん見てきました。親や塾から抑圧され続けた子どもがついに耐えかねて、全身でストレスを表現した結果だと言えます。

――症状がそこまで深刻化する前に、親は子どもの異変に気付かないのでしょうか。

本来ならば、親御さんがもっと早くに気づけたはずだと私も思います。ただ、塾で良い成績を取ることが最も大切だと思っている親御さんは視野が狭くなっていて、子どもの成績しか目に入らず、知らず知らずのうちに負担を強いてしまっているようです。

――体調を崩してしまう子どもの親は、どのようなNG行動を取っているのでしょうか?

NG行動は大きく2つに分かれます。1つは、「努力は必ず報われる、頑張れ」などと根性論を押し付けるケース。もう1つは、表面上は非常に優しく接しつつも、「私の思い通りにならないあなたは嫌いよ」という“裏メッセージ”を発しているケースです。

後者の場合はとくに、子ども自身も無意識のうちに親の顔色をうかがって行動するため、ストレスがかかっていると本人も気づけないことが少なくありません。

両者に共通する問題点は、子どもに目的意識が芽生える前に親御さんのエゴを押し通そうとすることです。親や先生に言われるがまま受験に臨んだとしても、本人に学校に通うモチベーションがなければ、受験勉強のやる気も起きません。中学受験を選択するのであれば、なによりもまず子どもの意思を尊重することが大切です。