特に弊社の商品企画の場合、過去に例のない商品ですから、コンセプトを的確に理解してもらえるかどうかが重要です。

「チンしてこんがり魚焼きパック」の場合、私は、お腹の空く夕方にプレゼンを設定し、実際に上司の目の前で、レンジで次々に魚を焼いてみせました。実物を五感に訴えながらプレゼンをしたのです。

私がプレゼンで失敗するとき、その原因のほとんどは準備不足です。本来ならば、コアターゲットを設定し、こういう生活シーンのこの部分でこう使われて、こんなふうに喜ばれると、事前に商品の使われるシーンを考え抜き、準備万端にしてから、プレゼンに臨みます。

それが、十分に考えぬくことをせず、準備が中途半端なままプレゼンに突入すると、当然、その弱い部分は上司から突っ込まれます。仕方なく間に合わせの回答をする。それを繰り返すうちに。やがて辻褄が合わなくなりドツボにはまる。ついには「おまえ全然わかってへんやないか」と上司に見抜かれます。上司への悪いプレゼンのお手本といえるでしょう。

また、若いころは、専務や社長を前にすると緊張して、それも失敗の原因になりました。緊張すると、せっかく準備してきても、本番で言いたいことが言えなくなるもの。目線も合わせなくなるから、ますます頼りなくなります。そういうときは、相手の役職は意識しないことです。偉い人にプレゼンするのではなく、一生活者、一消費者に向かって商品のよさをわかってもらうんだという意識に変えるのです。そうすれば自分の言いたいことが、きちんと相手に伝わるはずです。

※すべて雑誌掲載当時

小林製薬 マーケティング部 開発企画担当 十田哲郎
1963年生まれ。関西大学大学院修了後、小林製薬入社。研究開発室などを経て、現職。「無香空間」や「のどぬ~るスプレー」など小林製薬を代表する商品を開発。
(構成=齋藤栄一郎 撮影=浮田輝雄)
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