「モバイルブロードバンド」を旗印に携帯通信事業を展開するイー・モバイルは昨年11月、商用開始からわずか1年半で100万契約を突破した。

<strong>高島謙一</strong>●専務執行役員営業本部本部長兼営業推進部部長。1965年、北海道生まれ。86年北海学園大学経済学部卒業。製薬会社を経て旧DDIに入社。北海道支店や本社で法人営業を担当。2000年イー・アクセスに転じ、06年より現職。
高島謙一●専務執行役員営業本部本部長兼営業推進部部長。1965年、北海道生まれ。86年北海学園大学経済学部卒業。製薬会社を経て旧DDIに入社。北海道支店や本社で法人営業を担当。2000年イー・アクセスに転じ、06年より現職。

最後発の同社は通信可能エリアや端末の品揃えなど様々なハンディを背負う。そもそも企業サイズの違いから、投入できる経営資源には大差があるのだ。

だが、そんな環境でも、直近の契約純増数を見るとソフトバンクに次ぐ2位を獲得。NTTドコモやauといった超強力な競合相手がひしめく市場の中で規模以上の存在感を示している。

これほど健闘しているのは、定額制高速データ通信という新機軸に加え、ミニPCとデータ通信カードをセットにした「100円PC」でユーザーに衝撃を与えたことが大きい。

ただ、価格や商品スペックの差はすぐに埋められてしまう。ライバルを凌駕するには、ほかにも卓越した要素があるはずだ。

同社の場合には、「盟友づくり」「負けを認める」(高島謙一専務執行役員営業本部本部長)というキーワードが浮かんでくる。

まず高島本部長の言う「盟友」とは、大手量販店や販売代理店との協業関係を指している。

「この市場では従来、キャリアが商品やサービスを考え、流通チャネルに対し『これで決まりましたのでお願いします』という形が多かった。それでも新しい市場をつくれたので、流通にとって満足感は高いのですが、やらされ感があるのは否めません。これに対し、我々はパートナー企業と一緒に考えて商品開発に取り組んでいます」

この協業関係は、実は親会社イー・アクセスがADSLの販売を新展開していた時代から一緒に販売現場で汗を流し、意見を交わす中で培われたものという。高島本部長が続ける。

「パートナー企業に『こういう商品をやりたいんですが』と投げかけて話し合います。ダメ出しをいただくことも多々ありますが、一緒にユーザー目線で物事を判断していくと最終的に必ずよいものができるんです」