自由設計の注文住宅事業を展開するタマホームは1998年創業の新興企業。コスト管理の徹底を背景とした低価格を武器に、2007年5月期には1290億円のグループ売上高を計上、急成長を遂げた。

<strong>井野博文</strong>●多摩ニュータウン支店副支店長。1961年、熊本県生まれ。79年熊本商業高校卒業。京都や大阪の割烹で料理の修業を積んだ後、帰郷。家業の仕出し店での料理人、レストランマネジャー、住宅販売などを経て、兄の事業を手伝う。2003年タマホーム入社。07年より現職。
井野博文●多摩ニュータウン支店副支店長。1961年、熊本県生まれ。79年熊本商業高校卒業。京都や大阪の割烹で料理の修業を積んだ後、帰郷。家業の仕出し店での料理人、レストランマネジャー、住宅販売などを経て、兄の事業を手伝う。2003年タマホーム入社。07年より現職。

住宅という高価格の商材だけに、万事信頼がものを言う。「あまりに安いが大丈夫?」、そう揶揄されながら、なぜ先行企業との競合を勝ち抜くことができたのか。03年10月の入社以来連続してトップセールスを続ける井野博文氏はこう明かす。

「安ければ売れると思うのは間違い。お客様は、できるだけ安く家を建てたいとおっしゃいますが、だからといって、安い家が欲しいのではないんです。注文住宅という夢を求めて来られている。少しくらい追加のお金がかかっても、お客様の夢を形にするようなプランを怖がらずにお勧めすることが大事です」

売るのではなく、売れる仕組みをつくれば家は売れると、井野氏は言う。顧客が求めるものをすべて形にしてひとつのプランができたときに、そこにNOは発生しないということだ。

料理人、レストランマネジャー、建売住宅販売員と、さまざまな職業に就いた後で、兄が経営する美容関係の自営業を手伝ってきた井野氏が、「売るのではなく、仕組みをつくれば売れる」ということに気づいたのは、自営業の先行きに不安を感じた、ちょうど厄年の頃だった。

そのとき井野氏は、坪単価24.8万円で家を建てるというタマホームの新聞チラシを見て、衝撃を受けた。

「驚きました。この商品なら営業が少しお手伝いをするだけで売れると思いました。私が住宅の仕事を離れている間に家が勝手に売れる時代になっていた」

そして03年秋、タマホームに迎えられた井野氏は、熊本の支店で営業マンとして再スタートをきった。ここから井野氏は、徹底的に勉強する。

「しがらみを捨て、頭の中を真っ白にして、少しでも時間があれば、周囲の人になんでも聞きまくりました」