タマホームでは、設計士は顧客に会わない。つまり、図面のやり取りなども営業マンが担当する。それゆえに、最前線の営業マンには、建築に関する広く深い知識が求められるが、井野氏は短期間に、勉強を重ね、必要な知識を習得していく。
毎月平均で3棟。このときから井野氏はコンスタントに超ハイレベルの実績を残していくのだが、いくら必死で勉強したとはいえ、それだけで常にトップの座が守れるわけでもない。井野氏は何をしたのか。
「住宅をつくっていく作業や、建てた後のメンテナンスなど、条件はいろいろありますが、結局のところ、営業は人です。競合に負けるとしたら、それは人が負けたということ。人を売ることほど難しいことはないのですが、実は出会ったそのときに結果は出ているんです。お客様が初めて営業所に来られたとき、私たちはお車の誘導をしますが、そのときお客様が覗いたルームミラーに、最高の笑顔をした営業マンの顔が映っていれば、そこで、決まるんです。私は営業は最初の5秒だと思います」
常に最高の笑顔で迎えることは、言うほどに容易ではない。それを常に維持する秘訣を井野氏はこう語った。
「好かれたいと思うより好きになること。好きになって初めて好かれるんです。人に対しても物に対しても同じ。とにかく好きになることが大事です」
これが年間36棟、6億円という驚異の販売を維持する秘訣。
家を買うならこんな人から。井野氏はそう思わせる人だ。
※順位は2008年8月18日付日経産業新聞調べ
(永井 浩=撮影)