人間は納得したい生き物

人間は、何らかの説明を受けて納得したい生き物です。分からないことを分からないままにしたくないので、何らかの答えが欲しくなる。

しかし、「なぜ」に対する答えを出すためには、できるだけ事実を集めて積み重ねたうえで仮説を立て、検証するしかない。これを繰り返して耐えられるものだけが、真実や事実に近いものとして残っていくのでしょう。

この「なぜ」の繰り返しを怠って、簡単に答えを見つけようとすると、思い込みによって「そうに違いない」と考えるバイアスが無意識のうちにかかってしまいます。

また、陰謀論は検証のプロセスに耐えられず、ストーリーに合わない「外れ値」が出てきた時に、説明できなくなって行き詰まる。自説にとって都合のいい事実だけを拾ってくる場合には、それぞれの話は事実なので、一見、全体像も事実であるかのように見えてしまいかねない。

その点で非常に質が悪いのですが、きちんと調べればやはり「外れ値」が出てくる。自分勝手な説というのは、いくら説を正当化するものを並べても、「外れ値」を説明できません。

わかりやすさの罠

人はわからないことに耐えられないからこそ、わかりやすいもの、わかった気になりやすいものには弱い。すぐに飛びついて、そちらに流れてしまいがちです。

鈴木一人『資源と経済の世界地図』(PHP研究所)

あるいは「どうせ分からないから、もういいや」と理解することを放棄してしまう。第1回でお話しした中東の情勢などは、まさにそうなりやすい話題です。しかしそれでは思考停止に陥ってしまうでしょう。

人間は分からないことに対して、何らかの答えが欲しくなる、という性質を理解したうえで、我々研究者も情報提供をしていかなければなりません。

「世の中は確かに複雑だけど、言うほど不条理ではない」「理屈の通る答えはそれなりにある」と、事実という材料と一緒に自らが考えてmake senseした意見や論文を提示するのが、私たち専門家の仕事だと思います。

(インタビュー・構成=ライター・梶原麻衣子)
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