陰謀論やフェイクニュースを見分けるには、どうすればいいのか。東京大学公共政策大学院の鈴木一人教授は「人間はわからないことに耐えられない生き物だ。陰謀論でもわかりやすいものには惹かれてしまう。それを防ぐには『なぜ』の繰り返しを行うしかない」という――。(後編/全2回)(インタビュー・構成=ライター・梶原麻衣子)
東京大学公共政策大学院の鈴木一人教授
撮影=プレジデントオンライン編集部

駐日アメリカ大使が長崎の平和記念式典を欠席した意味

――2024年11月に行われる米大統領選が迫っています。トランプ、ハリスのどちらが勝つかで、中東への影響は変わりますか。

【鈴木】トータルで見れば、アメリカとしてのイスラエル「支持」に変わりはありませんし、トランプでもハリスでもそこは一緒です。ただトランプの場合はあからさまにイスラエルを支持し、ハリスは支持者からの反発が強いのでほどほどに支持する、というグラデーションはあります。

アメリカの大統領で最もイスラエルと距離を置いたのはオバマでしたが、それ以外はほとんどみんな同じポジションで、バイデンもトランプほどではありませんが、かなり支持しています。

――8月には長崎の平和記念式典にイスラエル大使が招待されず、英米をはじめG7の国々の大使が欠席しました。

この件については、主語をはっきりさせたうえで、丁寧に論じる必要があります。欠席したのはあくまでも大使であって、アメリカという国が長崎市の決定に反発し欠席したわけではありません。現に、式典には米政府が派遣した在福岡アメリカ領事館のアシーケ首席領事が参列しています。

駐日アメリカ大使のエマニュエルはイスラエル支持のユダヤ人で、彼の親戚は亡命を経験しています。そのため、イスラエルの尊厳が傷つけられるようなことは絶対に認められない。

もちろん、大使はアメリカという国を代表してはいるため、アメリカの判断とみられる側面はありますが、やはり大使個人の思いというものがあり、そこには個人と国を区別する見方が必要です。