2026年度末以降、ついに紙のきっぷがなくなる?
現在、都市部で使われている裏が黒いきっぷもエドモンソン券だが、磁気情報を書きこめる「磁気乗車券」と呼ばれるタイプで、1980年代以降の自動改札機の普及とともに主流となった。ただし、2021年度のJR東日本首都圏エリアにおけるICカード利用率は95%に達しており、IC専用自動改札機の設置拡大、自動券売機の設置台数削減で、紙のきっぷを久しく見ていないという人も多いだろう。
そんな磁気乗車券も、いよいよ歴史的使命を終えることになりそうだ。JR東日本や東武鉄道、西武鉄道など関東の鉄道事業者8社は2024年5月、QRコード乗車券を2026年度末以降導入し、磁気乗車券を廃止すると発表したのである。
前述のように、最後まで一定のボリュームがあった磁気式普通回数券は廃止できたものの、磁気券が1枚でも残っていたら磁気対応の自動改札機を完全には廃止できない。
そこで注目したのが、紙に印刷またはスマホ画面に表示し、非接触で読みこめるQRコードだ。海外の都市鉄道ではQRコード乗車券を導入した事例は珍しくないが、じつは日本でも10年ほど前から「沖縄都市モノレール(ゆいレール)」と「北九州高速鉄道(北九州モノレール)」で使われており、「舞浜リゾートライン(ディズニーリゾートライン)」も2025年夏以降に導入を予定している(ただし、QRコード乗車券になっても、エドモンソン券であることは変わらない)。
コストダウンだけではない鉄道事業者のメリット
QRコードというと読みこみに時間がかかるイメージがあるが、IC乗車券には及ばないものの、仕様によっては磁気乗車券より早く処理することも可能で、技術的なハードルは高くない。それでも大手鉄道事業者で導入が進まなかったのは、大都市では他社との直通運転や乗り換え改札の設置があり、1社では導入が困難だったからだ。
その意味で今回、8社共用のQR乗車券管理サーバーを設置し、歩調を合わせて導入を進めると発表したことは、QRコード乗車券の標準化に向けた大きな一歩である。
現時点で参加を表明していない東京メトロや都営地下鉄、東急などの事業者については、QR乗車券の取り扱いなどサービス面での調整を進めるとともに、磁気乗車券の縮小とQRコード乗車券への移行を共同で検討するとしている。
QRコード乗車券導入のメリットは鉄道事業者にとってのコストダウンだけではない。それを説明する前に、QRコードを活用した乗車券システムの仕組みについて解説しておこう。