さらに、初の見逃し配信481万再生達成も成し遂げた。地上波も配信も好実績を挙げ、大成功と言っても過言ではない。社内では「祝! 大入袋」も出されたと聞く。社員の士気が上がり、社内の雰囲気もよくなったに違いない。まさに、これから放送する日本テレビの「24時間テレビ」が狙っている効果もそれなのである。

高揚感と一体感を味わえる「祭り」

著者も同じような経験をしている。テレビ東京に在籍していたときのまだAD時代だったころ、1990年代は歌番組の全盛期だった。わが局にも「メガロポリス歌謡祭」と「年忘れにっぽんの歌」という生放送の大型特別番組があった。

その総合演出を担うのは当時の「花形ディレクター」で、私たちADは「いつかは、ああいうふうになりたい」とその姿に憧れ、やり方や演出方法を学び取ろうとした。会場に観客を入れての放送であったため、経理部からチケットを扱う助っ人が来たり、警備や観客誘導に総務の社員が立ち会ったりしていた。

営業の社員もスポンサーを客席に案内したり、出演者に挨拶したいと楽屋を訪れるお偉方をアテンドしたりしていた。普段は歌番組の担当ではない制作現場の人員も投入された。彼らが皆、口にしたのが、「いや~すごい熱気だね。圧倒されるね」といったような現場の雰囲気を楽しむ言葉だった。

それは、ある種の「祭り」である。そんな高揚感と一体感を、そこに参加するすべての社員が共有していたのである。そういうことがあると、どういうことが起こるだろうか。例えば「もうこんな会社辞めようかな」と思っていた社員も「もう少しこの会社で頑張ってみようかな」と思うようになるのである。そんなマジックのような効果が、実際にあった。

写真=iStock.com/Darwin Brandis
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低下し続けるテレビのブランド力

2.の「社会的なステイタスを保てなくなってきた」という「ほころび」に関しては、以下のデータを参照したい。文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所が毎年発表している「就職ブランドランキング調査」である。

この調査によると、2008年卒業生、2010年卒業生、2011年卒業生を対象にした3度にわたって日本中のすべての企業における「No.1人気」をフジテレビが獲得している。しかし、2012年以降は就職難のあおりを受けて安定志向が好まれ、テレビ局のランキングは下落してゆく。

直近5年間の「就職ブランドランキング調査(後半)」によると、テレビ局の中で最も高い順位をつけたのは、2020年64位(NHK)、21年44位(NHK)、22年86位(NHK)、23年123位(フジテレビ)、24年121位(フジテレビ)となった。