社員のモチベーションや士気を取り戻す
「ヒット番組」や「花形番組」が生まれなくなるとどうなるだろうか。CMが売れなくなる、会社がもうからなくなるという営利面でのデメリットがあるだろうが、やはり一番痛いのは「ヒト・モノ・カネ」のうちで最も大切な「ヒト」に影響してくるということだ。
制作現場はもちろんのこと、社内全体の士気が落ちてゆくのである。テレビ局で番組制作現場にいられる社員は一握りである。放送業務をおこなう会社を運営してゆくため、大半の社員が人事、経理、総務、営業などの地道な仕事を日々担っている。
そういった制作現場“以外の”社員たちにとっても、対外的に誇れる番組、胸を張って“うちの局の”と言える番組がなくなってしまうということはさみしいことだ。それどころか、愛社精神やエンゲージメントを下げる要因にもなりかねない。
では、そんなふうに下がってしまった社員のモチベーションや士気を取り戻すための方法とは何だろうか。その答えのヒントが、4年ぶりに復活し、7月20日から21日にかけて放送されたフジテレビの「FNS27時間テレビ 日本一たのしい学園祭!」にある。
この番組が復活したのには社長の港浩一氏の意思が大きく働いていると私は分析している。それは、港氏が社長に就任したタイミングとこれまでの経歴を見れば歴然である。
港氏の社長就任は2022年6月、そのわずか8カ月後の2023年2月に「FNS27時間テレビ」の復活を発表している。また、港氏は1991年から1993年にかけて大晦日に生放送していた「FNS大感謝祭」などの大型番組を演出し、これまで何度も「FNS27時間テレビ」を手がけている。
フジテレビ系「27時間テレビ」復活の狙い
それらの番組がどんなメリットを秘めているのかを知り尽くしているに違いない。だから、多くの障壁があるなかで「FNS27時間テレビ」を復活させたのだ。
社内においても反対意見があったであろうことは想像に難くない。では、その「メリット」とは何なのか。それはズバリ「社内のモチベーション」を上げるためである。
港氏が手がけてきた「FNS大感謝祭」や「FNS27時間テレビ」は、社員が一丸となっておこなう番組だ。全社挙げての番組は、人事、経理、総務、営業など、普段は制作現場を経験しない社員たちもさまざまなかたちで参加する。イベント的要素が強く、社内の各部署の連携や結束を強めるのに最適だ。
事実、「FNS27時間テレビ 日本一たのしい学園祭!」は21日(日)18時30分~21時54分の時間帯で個人視聴率6.9%の平均視聴率をマークして、フジテレビの2024年の最高記録を更新した。全時間帯の平均視聴率においても4.0%、コアターゲット(男女13~49歳)4.6%を獲得し、個人、コアともに同時間帯横並びトップを記録した(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。