プレゼンの「レベルが違う」あの経営者
【千葉】私のクライアントに多いのが、部長クラスの立場にいて、目指すべき数字ややるべきことはわかっている。でも、なぜ自分がそれをやりたいのか、どれだけ熱量を持っているのかというのは話しにくい、という人です。
こういうときは、ストーリーテリングの手法が有効です。なかでも「自己開示」というポイントをご紹介します。
自己開示とは、自分の悩みや弱点、または強みなど、ありのままの自分をさらけ出すことを指します。うまく使えると、聞き手の共感を得ることができます。
自己開示が上手なのが、トヨタの豊田章男さん。株主総会で、自分が孤独な“泣き虫社長”だったということを吐露したり、結構大胆なことをしているんです。
【三浦】豊田さんは本当にプレゼンがうまい。経営者の中ではちょっとレベルが違う。僕もいろんな企業の経営者のスピーチトレーニングをするなかで、豊田さんを参考にすることがあります。
まさに千葉さんのおっしゃる通り、だいたいネガティブなエピソードを入れるんですよね。「EVって言われてる時代に、私は本当は排気ガスをめちゃめちゃ出すガソリン車が好きなんです。でも時代の変化の中で……」と、自分の弱みや苦手なところをはっきり言うんですよね。
【千葉】私はこれ、三浦さんもやっていらっしゃると思っていて。ご著書『言語化力』のなかで、小学校のときのご家族のお話がありました。
【三浦】小学生のときに親父が破産して夜逃げしてるんで。
【千葉】その話を、裕福なご家庭の方が多い小学校で、すごく葛藤しながら話をしたっていうのがまさにこのストーリーテリング、自己開示なんじゃないかと思ったんです。
人生は最上のコンテンツである
【三浦】そうですね。これ本当に覚えておいてほしいんですけど、自分の弱みというのは絶対武器になるんですよ。
僕も就活の面接の相談をよく学生からされるんですけど、これすごいシンプルで。「自分のコンプレックスをおもしろおかしく語れる奴が受かる」っていう話なんですよね。
まさにストーリーと千葉さんもおっしゃいましたし、僕はよく「ライフ・イズ・コンテンツ」っていう言い方をするんですけど。
モテないとかお金がないとか、こういう失敗をしちゃったとか、自分の苦手な部分、自分で自分のことを好きになれない部分をおもしろおかしく語ると、人はみんなグッと惹きつけられる。
なぜならば誰しもが欠点や弱点があって、みんなそれを気にしてるんですよ。それをちょっとおもしろく語ることで前向きに受け止められるときに、人は聞く気になる。
でもそれをみんな隠して、だいたい自慢話をするんですよね。「学生時代にテニスのサークルが50人だったのを500人にして、大きい合宿を~」みたいな。知らないよ、おまえのその合宿の話なんか、と。
だけどその合宿で「実は財布忘れてしまって大赤字になっちゃって……でもこうやって誤魔化したんすよね」みたいに話されると、そこでようやく「お、どうした?」とこっちはなるっていう。
当たり前なんだけど、みんなそのことを忘れちゃって、自分の自慢話ばっかしちゃう。やっぱりコンプレックスや失敗談をストーリーとして語るっていうのは大事になりますよね。