火が小さいうちに手を打つ

第1段階で気づく人は、まずいません。でも、もしこの段階で気づいたら、防げることはたくさんありますし、職場でも家庭でも人間関係がスムーズになり、生きるのがラクになります。

たとえば上司のことでちょっとモヤッとしたとします。次にイライラして、それを放っておくと、上司が何もしていなくても、もう上司のこと自体が嫌になります。

いったん嫌になると、何をしても嫌になって、人間関係が悪くなります。そして、いよいよ会社に行くのが嫌になり、「辞めてやる〜!」となるわけです。

仕事のトラブル、倒産の危機、社員の退職、がんや病気、うつなどの心や体の健康問題、不倫、離婚などのパートナーシップ、子育てなどなど。

先ほどのサインの5段階は、あらゆるケースに当てはまります。自分にとって行動を起こさざるを得ない、向き合わざるを得なくなるまでに、実は段階を踏んでいるのです。火が小さいうちに手を打てば、防げるモノは防げます。

ゴミ箱に生ゴミが入れっぱなし

私がコンサルに入った、ある飲食店のケースで説明しましょう。

お父様が急に亡くなられ、修業中だった息子さんが帰ってきて飲食店を継ぐ話になった例です。一緒に店に出ているお母様は以前、私のセミナーで勉強をされた方でした。

お母様は最初、息子の代になったのだから、自分は口出しするまいと思っていたそうです。けれど、息子が店を継いでから、何かモヤモヤするものがあったそうなのです。

「あれ?」と思うことはあったけれども、それが何かわからず、息子を見守っていました。変な気持ちを感じたものの、そのままにしておいたのです。

そして小さな出来事が起きました。ある日、厨房ちゅうぼうに包丁が出しっぱなしになっていました。

写真=iStock.com/invizbk
厨房に包丁が出しっぱなし(※写真はイメージです)

またゴミ箱には、生ゴミが入れっぱなしになっているのを何回か発見します。

先代である夫は絶対にこんなことはしなかった。毎日ゴミは業者が取りに来てくれますが、息子は「今日は少なかったら、明日でいい」と言います。

それから、調味料が調理台の上に出しっぱなしになっていることもありました。