些細なことで責め合うような空気感になってしまった
誰も名乗らずにうつむいている状況で、疑心暗鬼な空気が漂い、社員みんなの気持ちも少しずつ荒れてきて、些細なことで責め合うような空気感に。そんな空気の中で仕事をしていくのが苦痛になり、耐えかねて「こんな会社ではやっていけない」とみんなが思うようになり、全員が辞表を出す事態にまで発展してしまったのです。
私がコンサルに入ったのはこのとき。社内の空気は、まさに最悪でした。
ことの発端は、「誰かがゴミを捨てればいい」というだけのこと。でも、ゴミを捨てれば問題が解決するかというと、そうではないのです。
その裏に社員の感情問題が隠れていました。
「社員一人一人に聞き取り」で見えてきたもの
ここで行ったのは、「感情」と「事実」を切り離して認知してもらい、今起きていることの不満の奥にあるものを、みんなで話し合うということです。
そこで社員一人一人に聞き取りを行いました。そこで明らかになったことは、「わかってほしかった」とか、「こんなに夜遅くまで作業しているのは私なのに」とか、「手柄を取られた」「ありがとうと言ってもらえなかった」「言っても無駄だ」などのいろいろな問題でした。
一つ一つは些細なことかもしれませんが、それが絡み合って、「誰かがゴミを捨てていない」という問題に付随していったのです。
コンサルに入った間、そうした気持ちをきちんと伝えるための交通整理をして、感情問題をクリアにしていきました。
明らかになった「2つの問題」
この問題を整理すると、大きく2つの問題がありました。
2 個々の作業に対して、共感したり理解してくれる「聴く力」がある人がいなかった
そこで私が3カ月間したことは、ひたすらそれぞれの言い分を聴いて共感し、「あなたはそんなに頑張っていたんですね」と言い続けることでした。
「こんなに頑張っているのに」
「こんなに残業しているのに」
「こんな思いで、この会社に就職したのに」
など、一人一人の思いがあります。
みんなが犠牲者精神になっていて、どこかで「受け止めてもらえない」「わかってもらえない」「報われない」という感情が積もり積もって問題を大きくしてしまったのです。
事件が問題ではなく、そこで何を言いたかったのか、わかってほしいことは何だったのかが問題だったのです。
じっくりその人の話を聴いて、共感していくうちに、「感情」と「事実」が切り離され、いつの間にかゴミもなくなり、実は問題ですらなかったことにみんなが気づき、お互いにねぎらう社風に変わっていったことで、会社を辞めるという事態は回避できました。