気をとられると「ゴリラの登場」にすら気づかない
ヴァーチャルアシスタントに限った話ではありませんが、人は何かひとつのタスクに非常に気をとられると、ほかの刺激に気づくことが困難にもなります。
このような状態を心理学の用語で「非注意性盲目」(inattentional blindness)と呼びます。この言葉は「見えないゴリラ」(invisible gorilla)という実験で、よく知られています。
被験者は、人々がバスケットボールをパスし合う動画を見て、「白いシャツを着た人たちが何回パスをしたか」を数えるよう、求められます。
動画の背景では、ゴリラの着ぐるみを着た人がやってきて、ちょっとしたポーズを取ったあと、画面から去っていきます。しかし、ほとんどの被験者がゴリラに気づかない。このような実験結果が報告されています。
まるでよくできた作り話のようですね。しかし、それほど私たちの脳は頼りないもの、と言えるのです。
世界の多くの技術開発者たちが、脳の機能をより熟知するようになれば、活用しやすいヴァーチャルアシスタントが出現するかもしれません。未来に大いに期待したいものです。
部屋が片付かないと、なぜ集中できないのか
本稿の最後に、こまめにやるべきことの代表格「掃除」についても触れておきます。
「やる気」を起こさないと切実に困るのが「捨てる」「片づける」という問題でしょう。これらを怠るとどうなるか。科学的にも、そのデメリットはわかっています。
あなたもそのデメリットを知ると、「プロスペクト理論」(序章「理由② 脳はエネルギーを節約したがるものだから」の項)が働き、「損をしないために掃除をしよう」と、きっとやる気を起こせるはず。ここでは2つの実験結果をお話しさせてください。
2011年に、アメリカ・プリンストン大学の神経科学を研究しているチームが「周囲にガラクタがあると、人は集中できない」という研究結果を発表しています。
「整理整頓された環境」と「乱雑な環境」で、被験者の脳がどのように反応するかをモニターすると、「乱雑な環境」では、気が散って集中できないことがわかりました。
その理由は、シンプルです。本人が、いくら作業に没頭したくても、部屋にあるモノから発せられるメッセージに気をとられてしまうからです。
モノが乱雑に存在しているということは、それぞれが「私を見て」と訴えかけているのと同じ。脳は、そちらに気をとられてしまいます。