「汚部屋」は老化のスピードを速める
UCLAの研究チームが、ロサンゼルスの32の家庭に入り、その暮らしを調査したことがあります。2013年、その様子がユーチューブに公開されました(A Cluttered Life:Middle-Class Abundance)。
驚くべきことに、一連の実験で「家の中にあるたくさんのモノを目にすると、ストレスホルモン・コルチゾールのレベルが上昇する」という事実が明らかになっています。
「コルチゾール」とは、副腎皮質でつくられるホルモンのひとつ。ストレスを感じると分泌され、交感神経が刺激され、血圧が上昇し、心拍数も上がることから、「ストレスホルモン」とも呼ばれます。
コルチゾールが多く分泌されると、抗炎症作用が起こります。
具体的には、免疫機能が低下したり、老化が進んだりして、心身の健やかさが失われやすくなります。
「汚部屋」や「乱雑な環境」が衛生面の理由でよくないことは間違いありません。加えて、コルチゾールの値を無駄に上げ続けて、心臓や脳に負荷を与えるととらえてみてください。あなたは今すぐ、整理整頓したくなるはずです。
掃除は「小さな目標」を立てて少しずつやろう
「捨てる」「片づける」ができたあと、私たちは、達成感や満足感を味わうことができます。脳はドーパミンを分泌します。
その心の動きは、ストレスの軽減や解消につながるものです。ドーパミンは、「やる気」を呼び起こしてくれるため、ストレスから解放されやすくなるのです。
そのうえ「また片づけをしたい」と思えるようにもなります。作業興奮(第2章「人は『作業』を始めると興奮する」の項)の力を期待して、「捨てる」「片づける」作業に取りかかることが、遠回りに見えて実はいちばんの早道です。
とはいえ、無計画に始めてしまうと、途中で「疲れた」と挫折しかねません。スモールステップ法(第1回記事〈1日20回、布団の中で唱えるだけ…脳神経外科医が教える「本当に頭のいい人」が毎晩やっていること〉参照)の考え方で、少しずつ進めることが大事です。
「自宅をまるごと、きれいにしよう」と大きな目標を立てたら、そのプロセスを「ひと部屋ごとにきれいにする」など、小さな目標に分類(ブレイクダウン)しましょう。
1回目の作業が済んだら、「やった!」という達成感を噛みしめて、ドーパミンを出す。そして、2回目の作業に自発的にとりかかる……という「ドーパミン・コントロール」のサイクルを繰り返せばよいのです。