※本稿は、庄島義博『朝起きてすぐに動きたくなる体』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
現代人は「見つめる」作業をしすぎ
今回は、周囲の方々が「魔法」とまで称してくれた最大の理由ともいうべき考え方をお伝えしていきます。
それは「目」という、ごく日常的にお世話になっている感覚器を通し、関係が深いポイントに好影響を与えていくという考え方です。
「目なんて、毎日酷使している。これ以上、目を使うなんて負担をかけすぎだろう」
そんな声も聞こえてきそうです。でもそれって、誰もがハマりがちな誤解なんです。
専門的な話になりますが、
①対象物を見つめるときに使う目の神経
②眼球をグルグルと動かす際に使う目の神経
この2つは、異なる神経回路になります。
現代人は、確実に①を酷使しすぎ。デジタル機器の高度な発達により「見つめる」作業は昔よりも格段に増えています。
でも②「目をグルグルと動かすような眼球運動」の瞬間は、それと反比例するかのように減っているはずなのです。
その大きな理由は、朝から晩まで「見つめる作業」に追われているから。
スマホの通知は気になるわ、メールも早く返さなきゃいけないわ、ドラマ配信の続きも気になるわ、SNSもチェックしなきゃいけないわ……。
寸暇を惜しんで文字や画像を見つめたいわけですから「目をそれ以外のことに使う」なんて、考えたこともない、という人が大半でしょう。
多くの人が「スマホ寄り目」になっている
しかし、私たちの祖先の暮らしを想像してみてください。
何人かで狩りを行う際、人々は「黒目の動き」で静かなコミュニケーションをとっていたといいます。黒目を動かすことで、狩りのターゲットに気づかれず、「獲物が左に行ったぞ」「わかった」などと伝え合っていたわけです。
現代に生きる私たちは、「黒目を動かす」ための筋肉をあまりに使わなくなってしまい、それにまつわる弊害すら起こってきています。
その代表例は、眼球運動に関係している神経でしょう。最近はスマホを凝視し続けるあまり、目がガチガチでスムーズに動かせない人がたくさんいます。私はその状態を「スマホ寄り目」と呼んでいます。
人の体はよくできています。本来備わっている器官や部位、機能でも、使わなくなった途端に、調子が乱れたり、劣化したり、衰退していきます。
それは実際に「廃用症候群」という言葉があるくらい、リアルな話。
「使わなくなること」とのトレードオフ(引き換え)として、あらゆる「不調」が全身のいたるところに出てきてしまうのかもしれません。なんとも皮肉な話です。