入社試験で優秀な人ばかり採ってもつまらない

「会社には、頭でいく人間、体でいく人間、心でいく人間、そういう連中が混在していたほうが組織は活発化していいんだ」

どうすればそういう人間が集められるんだろうと僕が聞くと、彼は思いもよらないことを言いました。

「入社試験で上から10人、下から10人採ったらどうだ」

下から、というのは随分楽観的だと僕は笑いましたが、彼は次第に本気になってきました。

「今は何と言ってもチーム力だからね。ともかく人事部と掛け合ってみるよ。選ばれるのが官僚のような人間ばかりじゃ、つまらないよ」

彼は大胆でユニークな発想をする男でしたが、ち密なところを持ち合わせているので、稲盛氏の言葉どおり、計画には反対、横やりなど乗り越えなければならない問題や、ややこしい人間関係と、あらゆることを想定してかかっていたことは想像に難くありません。

そして実現にこぎつけたなら、あとは楽観的に実行する。きっとやり尽くしたからこその楽観だと思います。今、企業業績は上向きだとのこと。彼の思い切った人事への提言が、いい方向へ動いているのかもしれませんね。

まず誠実、次に知性、最後に行動力ある人を

米国で投資の神様と呼ばれ、富のほとんどを慈善活動に費やしているウォーレン・バフェットは、人を雇う時に見るべきは、まず誠実さだと講演やインタビューでたびたび話しています。

ウォーレン・バフェット(写真=米国国際貿易局/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons

二番目が知性、三番目が行動力で、もし誠実さが欠けていれば、知性と行動力はその人自身の足をひっぱることになるだろうと。

確かに頭が切れて行動力もある。しかし誠実でないと言われたら雇う側としては二の足を踏みますし、友人には持ちたくないタイプですよね。

誠実さには、相手を、そして自分自身を重んじる気持ちが内在しています。自分の能力を過信し、心をどこかに置き忘れたようになれば、結局自分で自分を滅ぼしかねないというわけですね。