朗報をいちばん喜べなかったのは首相?

今年のノーベル平和賞は世界中に衝撃を与え、日本人を歓喜させた。

今回「日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)」が受賞したことは大いなるサプライズだったが、ノーベル委員会が日本被団協に平和賞を授与する意義は、核が使用される可能性が現実味を帯びている今、世界の人々に「核の恐ろしさと、核兵器を廃絶する重要性」を考えてほしいというものだった。

平和記念公園
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だが、この受賞の報に、石破茂首相は「長年、核兵器の廃絶に向けて取り組んできた団体に授与されるのは、極めて意義深い」と話したが、内心ではガッカリしていたのではないか。

石破首相は永田町で有名な「軍事オタク」で、防衛問題の第一人者と自負していた。その石破氏は総裁選中も「持論であるアジア版NATO創設と、米国との核共有や核持ち込みを提唱。米シンクタンクに寄稿した論文の中では、中国の台頭や北朝鮮の核・ミサイル開発の進展を受け、米国の抑止力が『機能しなくなっている』とし『この状況で中国を抑止するためには、アジア版NATOの創設が不可欠』と主張した」(西日本新聞デジタル版 2024年10月8日)。

首相就任後は、持論をトーンダウンしているが、衆院選で大敗しなければ、持論を推し進めようとしているのは間違いない。

「反対のことになっていくのかと危惧しておりました」

そこに核兵器の恐ろしさを証言し、核廃絶を訴える日本被団協が平和賞を受賞したのだから、内心「弱ったな」と思ったのではないか。

日本被団協の代表委員の田中熙巳てるみさん(92)に10月12日、石破茂首相からお祝いの電話があったという。

「首相は冒頭、『おめでとうございます』と語りかけ、小学生の時に被爆後の広島市の映像を視聴し『見るにたえなかった』と自らの体験を紹介した。

これに対し田中さんは、石破首相が米国との『核共有』などを検討する必要性に言及してきたことに触れ、『核兵器は持ってもいけない、使ってもいけないと言い続けてきた。我々の言っていることとは反対のことになっていくのかと、ものすごく危惧しておりました』と懸念を伝えた。

また、『軍備で安全を保とうと考えると、行きつくところは核兵器だ』と指摘。『戦争をしないで各国同士の信頼や不信を解決していくという方向に行くべきだ。日本もその先頭に立ってほしい』と求めた。

電話のやりとりは約5分間。通話を終えた後、田中さんは『(被爆の悲惨さを伝えたいと)言っていることはまともなんですけども、国の政策としてやろうとしていることと全然結び付かない』と語った。石破首相と直接会って話したいとの意向を示した」(朝日新聞デジタル10月12日 15:54

石破首相にとっては“やぶ蛇”だったようだ。