「早期解散」の進次郎氏から票を奪ったが…

石破首相が主張している日米地位協定の見直しも、アメリカから「今はその時期ではない」と否定されたと伝えられている。唯一の得意分野で得点することもできないようだ。

総裁選で、首相に就任後、早期に解散するという持論を述べた小泉進次郎氏に対して、予算委員会などで野党と論戦を交わし、十分に「国民の皆さまのご理解」をいただいた上で解散するのが筋だと否定していたのに、自分が就任したら戦後最速の解散に踏み切った石破首相に対して、野党からだけではなく、メディア、有権者も厳しく批判している。

可哀そうなのは小泉氏である。

小泉氏は、週刊文春(10/10日号)で阿川佐和子氏に、総裁選で敗れた悔しさをこう語っている。

「当日、帰宅して『パパは負けたよ』と(子どもたちに=筆者注)報告したんです。涙を見せながら『人生はね、負けるときもあるんだよ』と言って、そんな父親の姿を見て、少しでも子どもの教育に繋がればいいなと思ったんですよ」

彼の最大の敗因は「総理になればすぐに解散をして国民に信を問う」といったことだった。石破氏はそれに反駁して党員票を彼からかすめ取った。小泉氏は子どもたちに、「政治の世界では正直者がバカを見るんだよ」と付け加えなくてはいけないはずである。

各誌の選挙予想は「自民党の議席激減」

しかし、同じ人間が一夜にしてあれほど変われるものだろうか。私は呆れるというより感心している。

石破首相は腹の中では、何とか衆院選で議席減を最小にとどめ、みそぎが済んだ後は、「国民の皆さまの安全と国を守るため」という大義名分のもと、アメリカとの核共有を推し進め、憲法9条の2項を削除して自衛隊を国防軍と改称したいと思っているのではないか。

国会の党首討論でも自衛隊員の定数割れについて何度か言及していたが、それを解消するために、これも石破氏の持論である徴兵制を導入しようと考えているのではないか。

だが、政権支持率は44%で、内閣発足時としては3年前の岸田内閣と比べて5ポイントも低い。衆院選が石破首相の目算通りにいく可能性はかなり低いようだが、本稿では衆院選の議席予測を云々するものではないので、週刊誌各誌の当落予想を書き留めるだけにしておく。

文春(10/10日号)は、政治広報システム研究所の久保田正志代表と文春編集部が当落予想をやっている。

「自民にとっては、岸田文雄政権で離れてしまった『無党派層内の潜在的な自民支持層』の票をどれだけ取り戻せるかが議席を伸ばす鍵になる。ですが、盛り上がりに欠ける選挙戦となれば、無党派層は動きません。そのため、自民党は単独過半数(二百三十三議席)を大幅に割り込む二百十九議席と予測しました」(久保田代表)