「2030年までに30車種のEVを市場に出す」

そのトヨタが、ようやくEV開発に力を入れるようになったのは2021年のことだ。「2030年までに30車種のEVを市場に出す」と発表し、さらに2023年に社長に就任した佐藤恒治さとうこうじ氏は、「従来とは違うアプローチで、EVの開発を加速する」と表明した。

しかし、完全に出遅れているのは誰の目にも明らかだ。

iPhoneを世に送り出したアップルがノキアをモバイルディバイス市場から締め出したように、アメリカのEV大手テスラがトヨタを自動車市場から追い出す。そんな未来が、ありありと目に浮かぶ。

現在、トヨタの業績は絶好調だ。モバイルディバイスと違って、自動車は買い替えサイクルが長いから、今、街中を走っているガソリン車が、今日明日にもすべてEVになってしまうといった事態は起こらないだろう。トヨタも、すぐに倒産危機に陥ることはない。

EVでテスラに追いつき、追い越すしかない

しかし、やがて必ず買い替えのタイミングは訪れる。そのときは、大半の人がトヨタよりテスラを選ぶだろう。そこがトヨタの「終わりの始まり」になるかもしれない。10年、20年後には、自動車産業は日本の基幹産業でなくなっている可能性も十分考えられる。

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長きにわたり日本の大黒柱だった自動車産業が衰退すると、現在、自動車関連産業に従事している約554万人もの人々が失業の危機に瀕することになる。17.3兆円もの自動車輸出額を誇った2022年が、はるか遠き夢の日々になる事態が待っているのではないか。

そんな事態を招かないために、できることは何か。

もはやガソリン車には未来がない以上は、EVでテスラに追いつき追い越すしかない。総力を挙げて、その道を探ってほしいものである。今は、トヨタが発表した「2030年までに30車種のEVを市場に出す」というのが有言実行となり、成功することを祈るばかりだ。