「ガラケーvs.スマホ」によく似た構図

日本の自動車メーカーはEV開発で大きく後れをとった。それは、携帯電話におけるガラケー対スマホによく似ている。

スマホはガラケーから進化したものに見えるかもしれないが、それはまったく違う。

ガラケーはあくまで「電話機」であり、電話以上の機能を持たせることはできない。もちろん初期のものに比べれば小型化したし、メール機能やカメラ機能が搭載されてはきたが、ディバイスとしての機能は「電話機」の域を出ない。

ガラケー
写真=iStock.com/Wako Megumi
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一方、スマホは、アップルが「iPhone」(Phone=電話)と名付けたために電話機のような印象を与えたが、最初からパソコンだった。

ガラケーにはなかったタッチ操作や優れたユーザーインターフェースを導入したiPhoneは「携帯電話」ではなく「携帯パソコン」なのだ。

さて、そんなスマホの登場で何が起きたか。それは、ガラケーの覇者である「ノキア」の衰退である。ノキアはフィンランドのメーカーで、1998年から2011年まで世界一の販売台数を誇り市場を独占した。

トヨタはEVを甘く見ていた

ところが、スマホへの乗り換えが遅れ、時価総額はなんと90%も下落。倒産の危機に陥ったあげく、携帯電話事業から撤退したのである。通信機器メーカーとして再出発し、倒産は免れたが、かつて世界トップに君臨した覇者の面影はすっかり消え失せた。

この構図をガソリン車とEVに置き換えると、私の目には、トヨタがノキアに重なって見えてしまうのだ。

トヨタは1997年、ハイブリッド車のプリウスを発売し、世界的にヒットした。

しかし、このヒットがEVで後れをとる大きな原因になってしまった。初期のEVは、ガソリン車やハイブリッド車よりはるかに劣っていた。バッテリー性能が悪く、製造コストも高かった。そのため、トヨタはEVを甘く見ていたのである。

トヨタにしてみれば、EVは多少の進歩はしても、ハイブリッド車以上のものになるとは思っていなかったわけだ。だから、EVに目を向けることなく、水素を燃料にした内燃機関「水素エンジン」の導入に注力するようになった。