東芝などでも指摘されてきた体制の問題

取締役会の過半数を社外取締役が占める体制は一見、ガバナンスのお手本のように見えるが、絶対的な権力者である創業家出身者の常勤取締役が会長、社長を占めている中で、業務に明るくない社外取締役が具体的な事業内容に口出しできる可能性は低く、結果的に会長、社長の独裁を助長する形になるのは、東芝などの例でも指摘されてきたことだ。

さらに、世間を唖然とさせた月額報酬200万円の特別顧問就任や、小林前社長を取締役として残留させることを決めたのは、社外取締役が過半数を握る取締役会の議決だったはずだ。この議案に反対したと公表している社外取締役はいないし、この体制が問題だとして辞任した人もいない。つまり、ガバナンスが効かなかった最大の責任者である会長、社長を取締役会から更迭することも社外取締役はできなかったどころか、特別顧問就任におそらく揃って賛成したのだろう。

驚くべきことに、会長社長の辞任を決めて発表したにもかかわらず、小林製薬はその日、記者会見を開いていない。メディアの前で頭を下げるのが嫌なのか、あるいはメディアに突っ込んで質問されることに答える自信がないのか。

不祥事への対応が会社自体の存続を左右する

これでは到底、幕引きとはならないだろう。2023年に問題になったビッグモーター問題では、創業家が退場するだけにとどまらず、結局は会社を身売りせざるを得なくなった。ジャニーズ事務所も、創業一族の社長が会見に現れなかったことが批判を浴び、結局、会社が解体されることになった。不祥事が起きること自体はある意味仕方がない面もある。だが、その後のメディア対応や、外部に対する説明責任をどう果たすか、その姿勢が極めて重要になる。その対応を誤ると、会社自体の存続が危ぶまれる事態に陥るということである。

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小林製薬がこれまでの対応を十分に反省して、説明責任を果たそうとしているようには見えない。社長には創業家ではない山根聡専務が昇格したが、創業家以外の唯一の社内出身の取締役として、今回の対応で最も責任を問われるべきひとりであることは間違いない。まして、前会長が特別顧問として残り、前社長が取締役会のメンバーにいる中で、今までの社風を否定することなどあり得ないだろう。今後、小林製薬のガバナンスがどうなっていくのか。危機は乗り越えられるのか。健康被害を受けた人たちは確実に救済されるのか。杜撰な管理体制が根付いていた現場の作り直しは進むのかなど、問題はまだまだ山積している。

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