国勢調査で「聞き取り」の手順を省略

またしても国の「統計」を巡る不正が明らかになった。今度は、「国の最も重要な統計」とされる「国勢調査」。5年に1度、全世帯を対象に「全数調査」され、日本の「人口」が確定するなど、その他の統計の基盤になる。

国勢調査『聞き取り』怠る 大都市4割、統計法違反の疑い」と日本経済新聞が9月17日付け朝刊1面トップで報じたもので、国勢調査の信頼が失われることになり、「あらゆる政策の土台が揺らぎかねない」としている。

いったいどんな問題があったのか。国勢調査は全世帯に調査票が配布され、郵送やインターネットなどで回答を集めている。回収できない世帯については担当の調査員が訪問して督促することになっている。今回問題になったのは、それでも回答が得られない場合の対応。ルールでは、回答が得られない場合には調査員が周辺住民らに聞き取り、家族構成や職業の有無などの情報を調べて代理で記入することになっている。「聞き取り」でも確認できない場合は、役所の「住民基本台帳」などのデータを転載して調査を終えるのだが、多くの自治体でこの「周辺住民らへの聞き取り」の手順を省略していることが判明したというのだ。

横断歩道を渡る人々
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「聞き取り」対象の比率が急上昇している

日本経済新聞の調査では、対象の東京23区と政令市20市の43自治体うち、19の自治体で「聞き取り」を省いていたことが明らかになった。問題は、住民基本台帳が必ずしも正確とは言えない点。引っ越しても住民票を移さない人が少なくないためで、日経が示した例では福岡市の2020年10月の人口は、国勢調査では161万2000人なのに対して、住民基本台帳では156万1000人と5万人以上の違いがあったとしている。だからこそ、「聞き取り」が重要だとしているのだが、そもそも国勢調査の正確さを期すために「聞き取り」という手法に依存していることにも問題がありそうだ。

実は、国勢調査の「全数調査」という建前が危機に直面している。「聞き取り」が行われるということは、そもそも回答が得られていないということを示すが、その「聞き取り」の比率が急増しているのだ。1995年調査では0.5%だったものが、直近の2020年調査では16.3%に大きく増えている。当然、周辺住民からの「聞き取り」では国籍なども分からないケースが多く、調査票には「不詳」と書かれる項目が増えることになる。