小林製薬の芳香消臭剤「サワデー」はどのように生まれたのか。商品開発を手掛けた小林一雅会長は「当時、大手メーカーはトイレという汚い場所で使う商品を避けていた。率先して新しい市場を作ったことで、長く愛されるブランドに成長した」という――。
※本稿は、小林一雅『小林製薬 アイデアをヒットさせる経営』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
20期以上連続で増益・増配ができているワケ
2020年の当社グループの売上高は1505億円でした。売上規模だけでいえば、医薬品メーカーとしては、武田薬品工業や塩野義製薬といった大企業よりも小さく、衛生日用品も手掛ける大手メーカーとしては、花王やプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)よりも小さいです。
それでも、おかげさまで23期連続の(純利益の)増益と、上場から22期連続での増配ができている会社です。
当社がなぜ、現在のように伸展することができたのか。企業戦略上の観点から、その理由を強いて挙げるとするなら、「ニッチャー」にこだわり続けてきたからだといえるのかもしれません。
まだ市場になく、それでもお客さまが「あったらいいな」と思う。その潜在的ニーズを掘り当てるアイデアを生みだし、ニッチなマーケット向けに絞りこむための製品コンセプトを創り上げる。そのコンセプトに基づく新製品を開発し、市場に投入し、ヒット商品に育てていく――。
「小さな池の大きな魚」を狙う経営戦略
このニッチなマーケットで闘うという小林製薬の経営の在り方を、私はいつからか、「小さな池の大きな魚」戦略と呼ぶようになっていました。
その池は、小さい。けれども、小さな池にも魚はいるものだ。魚がいそうな小さな池を探し出し、そこで、釣り糸を垂らす。ただ釣るのではなく、他の釣り人が来ないうちに、真っ先に足を運び、釣るのだ――。
そしてこの独自の戦略の確立にとって原体験となったのが、現在も市場で多くの方々に支持される3つの商品ブランド「アンメルツ」「ブルーレット」「サワデー」の開発と育成でした。いずれも、私が米国留学時代(小林製薬入社後の1965年)に想を得たものです。