国内で初めておりもの専用シートを発売したのは小林製薬だ。看板商品「サラサーティ」は現在も高いシェアを維持している。同社の小林一雅会長は「他社の参入で苦戦したこともあったが、肌に優しいコットン素材を初めて取り入れ、その強みを商品名で訴えることで、シェアを取り戻した」という――。

※本稿は、小林一雅『小林製薬 アイデアをヒットさせる経営』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

国内初のおりもの専用シート「サラサーティ」
画像提供=小林製薬
国内初のおりもの専用シート「サラサーティ」

おりものによる不快感を解消する「サラサーティ」

おりものによる下着の汚れや不快感、臭いなどを気にして頻繁に下着を交換する女性も少なくありません。生理用ナプキンで代用している人もいて、そうしたことに不自由を感じている女性もいます。

このニッチなニーズに対応しようと開発したのが、小林製薬のサラサーティでした。サラサーティブランドは、当社の「小さな池の大きな魚」戦略の優等生でもあります。

※「小さな池の大きな魚」戦略とは――魚がいそうな小さな池を探し出し、そこで、釣り糸を垂らす。ただ釣るのではなく、他の釣り人が来ないうちに、真っ先に足を運び、釣る。ニッチなマーケットで闘う小林製薬の経営戦略のこと。

1988年に、生理日以外に使用する「おりもの専用シート」として国内で初めて発売し、初年度の売上は7億円を記録し、ニッチマーケットの商品としては大ヒットでした。

女性社員は「おりもの」という言葉に反発

いざ製品を市場に出すにあたって、問題となったのが「おりもの」という言葉でした。当時の風潮として、おりものは女性がこっそり処理するもので、口に出していうのがはばかられるものだという認識があったように記憶しています。

当然ながら、「『おりもの』という言葉は使わないほうがいい」という意見が女性を中心に社内でも多数を占めました。

そうした女性の気持ちを十分に理解したうえで、それでもあえて、「わかりやすさ」というこだわりを優先し、「おりもの専用シート」という言葉でその利便性を打ち出すことにしたのです。