「肌へのやさしさ=かぶれない」。そこに間違いなく「わかりやすさ」があり、この表現を付加して商品化することが、お客さまにとってのベネフィットを即座に理解してもらえることになるという確信を得ることになったのです。

「かぶれにくさ」と「高級感」といったコンセプトに絞り込まれたこの新製品開発は、品質面でもくどいほどのテストを繰り返しました。

そのなかで、コンセプト評価だけなら、それまでの「薄さ」にこだわることが評価されたのに、実際の使用評価になると、薄くてペラペラしたものより、「ふわっと柔らかいクッションのような素材の上にコットン100パーセントの不織布をつけたもの」が高評価を得ることなどもわかってきました。

実際に使用する方々と対話をしながら、改良・開発を重ねていく。生活者の言葉から、商品のコンセプトを引き出していく。そうしたマーケティングの原理原則を、開発グループの社員たちも、この体験を通じて、肌で感得してくれたようです。

競合他社と差をつけたシンプルな商品コピー

仮説が検証され、さらなる確信に変わるなかで、地区販売を開始、次に全国販売へと展開がはかられました。ネーミングは「サラサーティ・エクセレント」ではなく、「サラサーティコットン100」とし、そのパッケージにはより大きな文字で「かぶれにくい」というコピーを付すことに決めました。

小林一雅『小林製薬 アイデアをヒットさせる経営』(PHP研究所)
小林一雅『小林製薬 アイデアをヒットさせる経営』(PHP研究所)

「コットン」だから「かぶれない」。それ以上の格好いい言葉を並べる必要はないのです。ベネフィットをそのままシンプルに表現する。競合するものとの違いを一目瞭然のものにする。そこに「わかりやすさ」が生まれるのです。

そして「サラサーティ」誕生から7年後の1995年、このブランドは息を吹き返し、シェアを取り戻すことになったのです。

私はこうした経験を、社員の一人ひとりと一緒になって積み重ねてきました。社員は私を「天才肌」と言っているようですが、そうではないのです。社員の努力を見守り、その折々でアシストし、またトップとしての決断をし、みんなの背中を押していっただけなのです。

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