「ブルーレット」はトイレ掃除から日本人を解放した
同年末には「サワデーボーナス」が出ました。従来の2倍近いその金額に驚いた社員の奥さんたちから「間違って支給されているのではないか」との電話があったほどです。
この嘘のような本当の話が語り継がれるほどの大ヒットを経験するなかで、ヒット商品がいかに会社を元気にしてくれるものかを会社全体で実感することができたのです。
そして現在の小林製薬において、この「サワデー」よりも大きな売上を上げるブランドが、同じトイレ用品の「ブルーレット」です。サワデー発売の6年前(1969年)に発売しました。米国留学から帰って、最初に手掛けたトイレ用品です。
すぐさま大ヒットしたサワデーと違い、ブルーレットは徐々にお客さまの支持を広げていった商品でした。
それまでにも国内でトイレ用品がなかったわけではありませんが、レバーを引くとタンクから青い水が流れ出し、よい香りが漂い、便器もきれいにするブルーレットは、日本ではまだ見たことがない、日本の家庭を、トイレ掃除という大変な家事から解放する画期的な商品でした。
いまや芳香消臭剤は1000億円弱の市場に
ただ発売当時は、くみ取り式が大半で、水洗トイレの普及率が2割程度しかなかった時代でしたので、ブルーレット購入者のリピート率は高くても、すぐに大きな結果を出すことはできなかったのです。
ところが日本経済が急成長し、一般家庭の生活水準が日増しに向上していくなかで、1970年代に入って、水洗トイレの普及率が急速に高まりだすのにともない、売上も大きく伸びていったのです。
近年では、トイレだけでなく、さまざまな生活環境で使用される芳香消臭剤というカテゴリーは、国内だけで938億円ともいわれる市場に成長しています(出所:インテージ SRI+データ。市場名〈芳香・消臭剤〉、期間〈2020年〉)。
もはやニッチマーケットとはいえない状況ですが、この成功体験に当社の活路があることを私は確信するようになっていったのです。