現場の報告が届かないか握りつぶされる「社風」

結局、この後手後手の対応は、小林製薬という会社の企業体質なのだということが明らかになってきた。

7月23日に公表した「事実検証委員会」の報告書でも、聞き取り調査の結果、紅麹を培養するタンクの内側に青カビが付着していたと品質管理の担当者に伝えたところ、青カビはある程度混じることがあると告げられたという証言があったという。結局、紅麹サプリによる健康被害は製造工場で発生した青カビが原因だったと見られているが、現場から報告が上がっても、それがきちんと経営層に届いていないか、途中で握りつぶされるのが「社風」だったということなのだろう。

たくさんのオレンジのメガホンに混じる目立つ青い色のメガホン
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取締役会の総括では、「組織的に隠蔽しようとする意図や行為は確認されなかった」とした一方で、健康食品の安全性に対する意識が不十分だったとし、健康食品の摂取による健康被害発生時における行政報告や製品回収の判断基準が曖昧にしか定められておらず、実際に本件事案が発生した後、行政報告を行うのは「因果関係が明確な場合に限る」との安全管理部における従前からの解釈基準を採用していたとしている。あたかも消費者庁の基準が曖昧だったから報告しなかったと言わんばかりの総括に、武見敬三厚労相は「完全に自分勝手な解釈。ガバナンスの問題だ」と強く批判していた。

社外取締役が十分に機能したとはいえない

総括では、取締役会や社外取締役に報告されていなかったとしたが、まさにこれはガバナンスの問題だ。創業家の会長社長が絶対的な力を握っている中で、マイナス情報を耳に入れることができないムードがあったのではないか。

だが、マイナス情報がトップや取締役の耳に入らないとしたら、ガバナンスが効くはずなどない。この問題が起きる前の同社の取締役会構成は7人で、社外取締役4人と過半数を占める。社内の3人のうち2人が創業家の会長と社長だから、残る1人はまったく会長社長の言いなりだったと想像できる。本来ならここで4人の社外取締役が監視監督機能を担うはずだが、創業家の意向で選ばれた人たちなのか、今回、社外取締役が十分に機能したとはいえない。

社外取締役は一橋大学名誉教授の伊藤邦雄氏や、イー・ウーマンの創業者の佐々木かをり氏など著名人を揃えている。伊藤氏はコーポレート・ガバナンスの第一人者と言われてきた人物だが、小林製薬や健康食品産業に詳しいわけではない。佐々木氏なども他に複数の社外取締役を務めていて多忙極まりない人たちだ。紅麹サプリ問題が3月に公表、大問題となった以降も、社外取締役が主導して真相解明や危機管理に当たったようにはまったく見えない。