会長と社長の辞任を決めたものの…
紅麹サプリメントによる健康被害問題で、小林製薬の対応に対する批判が収まらない。同社は、「事実検証委員会」の調査報告を受けて7月23日に「取締役会の総括」を公表、小林一雅会長(84)と小林章浩社長(53)の辞任を決めた。
これで一応の幕引きを図ろうとしたのは明らかだったが、7月26日には厚生労働省から「小林製薬株式会社からの報告に係る不備について」という文書が出された。同社の紅麹を使った食品などを製造・販売していた企業などに自主点検を求め、それを厚労省に報告していたが、製造だけを行って一般向けに販売していない会社を報告対象から除外していた、というものだった。
また同日、小林製薬がホームページで公表した「コーポレートガバナンス報告書」で、辞任した小林一雅前会長が就任した「特別顧問」の報酬が月額200万円で任期が3年であることが“発覚”。テレビなどがそれを一斉に報じた。通常の顧問は月額50万円でその4倍を支払うという話に、「本気なのか……引責辞任した人が『報酬毎月200万円』の新役職 紅麹問題の小林製薬 補償、反省は大丈夫?」(東京新聞)といった批判の声が上った。
死亡者数を「隠していた」印象を与えた
問題発覚時点から、小林製薬の対応は後手に回ってきた。
小林章浩社長が記者会見を開いて健康被害を公表したのは3月22日。ところが、紅麹サプリの摂取者に腎疾患の症状が出ていることを同社が最初に把握したのは1月15日だったことも明らかになった。原因究明に時間がかかったというのが理由だが、健康被害を防ぐという意味では、即時に公表すべきだったろう。
記者会見4日後の26日には厚労省が、サプリ摂取との因果関係が疑われる死亡例が新たに1人増え、2人になったと発表。入院した人は106人に上ることも判明した。これを受けて29日にも小林社長氏が記者会見をし、同日時点で摂取後に死亡した疑いがある人は5人としていた。
その後は小林製薬は記者会見を開かないまま、次々に問題が発覚していく。5人としていた死亡者が6月に入ると新たに76人もいることが判明、その後100人を超えたのだ。もちろん全てにおいて因果関係がはっきりしたわけではないとはいえ、その数を「隠していた」という印象を世間に与えた。