科学的に証明された「願望実現の法則」

わたしの願いは、この本がマニフェステーションにまつわる誤解を解く助けになることだ。真のマニフェステーションとは、意義深い人生、目的意識のある人生を手に入れるための、そして究極的には、自分にとって本当に大切なものに気づくための手段なのだ。

マニフェステーションは長年にわたって誤解されてきた。占星術や天使のビジョン、霊魂再生といったニューエイジ的な偽科学と同じ扱いを受けている。

最近になるまで、意図が現実になる過程を科学的に証明することはできなかった。脳のどの部位がマニフェステーションを可能にしているのか、誰にもわからなかった。しかし脳イメージング技術が大きく進歩した結果、いまでは細胞レベル、遺伝子レベル、さらには分子レベルにおける脳の活動を詳細に観察することができる。つまり、認知神経科学、脳の大規模ネットワーク(※3)といった学問分野から、マニフェステーションを語れるようになったのだ。

※3 脳の大規模ネットワーク Steven L. Bressler and Vinod Menon (2010). “Large-scale brain networks in cognition:emerging methods and principles,” Trends in Cognitive Sciences , 14(6): 277-90, 

鍵となるのは「脳の神経可塑性」

マニフェステーションは、簡単にお金持ちになれる怪しげなスキームでもなければ、願望をかなえる魔法のようなシステムでもない。マニフェステーションは厳密な科学であり、その根底には、脳の構造が物理的に変化する「神経可塑性しんけいかそせい」という現象がある。

人間の脳は、環境に適応したり、損傷を治したりしながら、その構造や機能を変化させている。神経可塑性とは、こういった一生続く脳の変化を一般的に表現した言葉だ。可塑性は脳のスーパーパワーであり、経験、くり返し、意図によって形づくられる。何か新しい経験をしたり、何かの行動をくり返したりすると、脳の物理的な構造が変化し、新しい回路が形成されたり、古くてもう使わなくなった神経の通り道が削除されたりする。

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つまり、自分の注意を向ける先を変えれば、脳の物理的な構造を変えることができるのだ。学習と実践を司る脳の部位が強化され、夢の実現が可能になる。脳が環境に合わせて変化すると、パーキンソン病、慢性的な痛み、ADHDなど、あらゆる病気や症状の緩和につながることがわかっている。

そして、マニフェステーションのしくみもこの神経可塑性で説明できる。何かを意図することで脳の構造が変わり、その結果、実践を通して意図したことが現実になるからだ。