また、相手を深く知れば「どういう提案をすれば採用してもらいやすいか」の戦略を立てることができます。PRしたい相手はメディアの人ではなく、その向こう側にいる視聴者や読者です。「この番組を見ている視聴者なら、こういう切り口で取り上げてもらえるのではないか」という目途がつけられるわけです。

ただし、取り上げるか否かやどのような取り上げ方をするかは、相手次第です。メディアの人にとってみれば、こちらのPRをしてあげる義理はありません。そして、その媒体の視聴者や読者の興味やニーズを一番よく理解しているのは、ディレクターであり編集者なのです。

餅は餅屋です。その道のプロを信頼し、彼らの「視聴者や読者に有益な情報を届けたい」「楽しんでもらいたい」という思いに寄り添って、扱い方は委ねること。協力できる部分は可能な限り協力し、いい番組や紙面を作ってもらいましょう。

繰り返しになりますが、PRの目的は企業と消費者(あるいは世間)と良好な関係性を構築することにありますので、露出が直接的な宣伝になっていなくてもいいのです。

自分本位のアピールは迷惑でしかない

ではこのPRのスキルを、例えば営業担当者が応用する方法を考えてみましょう。

営業の仕事は取引先に自社の商品やサービスの魅力を伝え、契約してもらうことです。まずは商品やサービスについて、何を聞かれても即答できるだけの知識を備えていなければいけません。競合の強みや弱みも把握し、どういう売り込み方ができるのかを考えます。

次に、誰に売り込むかを考えます。手当たり次第に電話をかけたりDMをバラまいて「わが社の製品はこんなに素晴らしいのです」と宣伝するのは、PRとは違います。それが売り上げUPに効果的な場合もあるでしょうが、PRで優先すべきは長期的かつ継続的な関係性の構築です。

どんな相手なら興味を持ってもらえるか。相手のニーズを探り、それに適った提案ができるように戦略を練ります。自分本位のアピールは、相手には迷惑でしかありません。営業がしつこかったら自分がどう思うか、想像すればわかるでしょう。

営業担当者がPRのスキルを使うなら、売ることだけを考えるのではなく、相手がいい仕事をするために何を欲しているか、自分の立場で力になれることがないかを一生懸命に考えて「できることがあれば協力させてください」というスタンスでアプローチすべきです。

その結果、そのときには契約に至らないかもしれません。でも、それは失敗ではありません。関係性が生まれ深まったことを成果として、次につなげていくことを考えましょう。

アプローチした相手がどういう人物でどのようなやり取りがあり、今後どのようなニーズがありそうかといった情報は、部署や社内で共有しましょう。今後関係が積み重なるほど、あなたや仲間のアプローチが相手に刺さる確度は高まっていきます。