2023年下半期(7月~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。仕事術部門の第3位は――。(初公開日:2023年10月11日)
理屈と屁理屈の違いはどこにあるのか。弁護士の紀藤正樹さんは「理屈とは、自分の価値観を拠り所にした意見の理由だ。一方、屁理屈は価値観を伴わない理屈だ。価値観に支えられた意見をぶつけ合うのが議論なのだから、『主観を交えるな』というのは道理が通らない」という――。

※本稿は、紀藤正樹『議論の極意 どんな相手にも言い負かされない30の鉄則』(SB新書)の一部を再編集したものです。

議論する2人のビジネスマン
写真=iStock.com/mediaphotos
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意見は、価値観と理屈でできている

意見とは、ある事実を自分の「価値観」で評価し、そこに「理屈」を伴わせた言葉です。価値観は事実に対する評価で、理屈とは意見の理由です。

では、あなたの理屈(意見の理由)が強固であれば、相手はあなたの価値観を受け入れざるを得なくなり、あなたは議論に有利になるでしょうか。

それは「単純にそう言えない」というのが私の考えです。

というのも、ある物事について賛成の立場をとる人と反対の立場をとる人は、往々にして同じことを問題にしており、しかも同じくらい理屈の筋が通っている場合が多いからです。

「同性婚」で考えてみましょう。賛成派も反対派も問題にしているのは、次のように、「①結婚制度の意味や存在意義」、「②結婚制度における人権や平等」といったことで一致しています。

同性婚賛成派……「①結婚制度とは、望んだ相手と家族という1つの共同体を形成することを保証するものである。したがって②異性カップル、同性カップルにかかわらず、誰もが等しく結婚できる権利を有するべきである」

同性婚反対派……「①結婚制度とは、子を為し、血のつながった家族をつくることを保証するものである。したがって②結婚できる権利は子を為せる者の間で、すなわち異性カップルだけが有するべきである」

ご覧のように同じことを問題にしているうえに、いずれも形式上の筋は通っています。論理矛盾は見られません。では、どこで対立しているのかというと、理屈ではなく価値観の部分です。

「どちらが正しいか?」ではなく「自分はどちらの理屈を選びたいか? (どちらの理屈を正しいとする立場でありたいか?)」という価値観こそが自分の意見の拠り所であり、結論を分ける分岐点なのです。