広報はしていてもPRができていない

私は広報・PRで17年の経験があり、現在はPRエージェンシーの経営者として企業の広報・PRを請け負っています。広報とPRは同じと認識されている方が多いのですが、私の中では明確な区別があります。

広報とは読んで字のごとく、広く報じる。企業が発信する情報を、より多くの人に知ってもらう活動です。一方、PRとはPublic Relationsの略で、企業が世間(外部の個人や企業)と良好な関係性を築いていくための活動です。

私は日頃、広報はしているけれどPRができていない企業が多くある、と感じています。あなたの会社はどうでしょうか。伝えたいことを伝えてはいるものの、それによって信頼関係が構築できたり、おつきあいが深まり、広がるまでには至っていないと感じることはないでしょうか?

PRが真価を発揮するには自社や自社の商品についての理解はもちろんのこと、相手に対する理解や配慮、伝え方のスキルが必要です。またそのスキルは職場の内外を問わず、あらゆる個人のコミュニケーションにも応用できると思っています。

そこで今回は、私がPRのプロとして心掛けていることや、メディアの人に対してどんなアプローチをしているかを具体的にお話ししつつ、他者/他社と良好につながるコツについて考えてみたいと思います。

タブレットを見せながらビジネスの説明をする女性
写真=iStock.com/Patrick Chu
※写真はイメージです

まず、PRにおける私のスタンスから説明しましょう。私は企業から「会社やサービスをPRしてほしい」という依頼を受けて動きます。具体的にはメディアの人にアプローチして、その媒体(TV番組や新聞・雑誌、YouTubeなど)で映像や記事として取り上げてもらうのです。

広告宣伝であれば枠(放送時間や紙面)を買い取って自由に報じればいいのですが、PRではそういうわけにはいきません。情報を取り上げるか否か、どう扱うかの決定権や編集権は先方にあるからです。

私の役割は、それを見た視聴者や読者が依頼主のサービスに好印象を抱いてくれるような取り上げ方をしてもらうことです。そのためのテクニックはいろいろあるのですが、最も基本的で大切なことは「自分を知り、相手を知ること」です。

自分(PRする企業やそのサービス)の魅力を伝えてもらおうというのに、自分がその魅力について知らなければ、お話にならないでしょう。それは勝手な思い込みや独りよがりではなく、競合や消費者のニーズも踏まえた理解でなくてはいけません。

また、相手(番組や媒体またはクリエイター)のことを知りもせずに「おたくの土俵を使わせてください」とお願いするのは失礼ですし、相手も受け入れてくれません。過去の放送回やバックナンバーを取り寄せて、可能な限り目を通します。

自分と相手を知り「誰にお願いすれば効果的なのか」がわかれば、売り込み先が絞れます。アプローチする数が多いほど、成果が上がるわけではありません。ピンポイントに「この番組で取り上げてもらいたい」「この媒体に掲載してほしい」と思う相手に届いて、興味を持ってもらうことが成果につながります。