PRしないことがPRになることも

PRのスキルは仕事を離れても活用できます。PRしたいのが商品やサービスではなく、あなた自身である場合です。例えば、今後の転職や再就職を見据えて、人脈を広げていきたいケースで考えてみましょう。

何から手をつけたらいいかわからない人は、Facebookから始めるといいでしょう。「それならずっと前からやってるよ」という人も多いでしょうが、自分をPRする目的で使ってはいないと思います。

友人や知人に向けての近況報告なら、映える写真を載せるのもいいでしょう。自己主張なら政治に対する憤懣やるかたない思いを吐露するのもいいでしょう。ですがPRを目的とするなら「その投稿が自分の好印象につながるのか」「見た人が自分についてどう思うか」を常に意識してほしいのです。

100人に「いいね!」を押してもらうのが、良いPRではありません。あなたが興味のある業種や企業、そこへつながる可能性のある数人に届けることを考えます。「自分はこういう仕事に挑戦してみたい」「そのためにこんな試みをやっている」といった内容を、しつこくならない程度にアピールします。

個人的なアカウントであれば、相手も仕事モードでは見ていないでしょうから、肩肘張らない話題も織り交ぜつつ、相手が思わずコメントしてしまうような投稿ができれば大成功。私は「この人に届けたい」と見込んだ人からコメントがきたら、すぐさま「見てくれたんですね。ありがとうございます」とDMを送り、次へつなげるようにしています。

転職や再就職では、時に「PRしないことがPRになる」ケースもあります。自分を売り込みたい気持ちが強すぎて、経歴を主張しすぎてしまうと「ここまで実績のある人に任せるほどの仕事はない」「こんな大組織にいた人が、今さらウチのやり方に合わせるのは難しいだろう」と敬遠されてしまうからです。

特にシニアの再就職では、これまでの肩書や経歴はいったん全部リセットし「何でもやります!」という心構えのほうが歓迎されやすいとも聞きます。専門職としての転職ではPRになる内容が、再就職では逆効果になる可能性があることは、覚えておいたほうがいいでしょう。

これは趣味のサークルやボランティアなど、ビジネス以外のコミュニティに入っていくときにも言えることです。自己紹介を求められる場面で、これまで仕事一筋にやってきた人はどうしても仕事絡みのアピールをしてしまいがちです。

ですが、町内会の集まりで「私は○○商事の元部長で、現役の頃は数百人の部下を束ねて数々の巨大プロジェクトを指揮してきました」などと話しても、尊敬されるどころか嫌われてしまうのがオチでしょう。相手のニーズや興味のありかが探れていないことが引き起こす悲劇です。

とはいえ、初めて参加する会合でニーズや興味のありかがわからないまま、自分のことを話さなければならないのも大変かもしれません。そんな場合はとりあえず当たり障りのない自己紹介をしておいて、早々に質問する側にまわりましょう。

「日頃どんな活動をされていますか」
「これまでどんな実績がありますか」
「ぜひ私にも教えてください!」

自分に関心を寄せてもらって、嫌な気分になる人はいません。いきなりインパクトを与えようとせず控えめに仲間に加わり、相手にいろんな角度から質問を投げつつどんなニーズがあるかを探り、自分が求められる役割を見つけていけばいいのです。

最初からアピール全開で「あれもこれもできます」とハードルを上げて期待はずれと思われるより、あとから「○○さんにはこんな一面もあったんですね」と驚かれるほうが、PRとしての効果は大です。

PRとは、自分が狙った相手に知ってもらいたい情報を届け、活用してもらうためのスキルです。どうすれば効果的に、より魅力的に伝わるか。あなたの思いと工夫次第でどんどん上達していけます。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年7月19日号)の一部を再編集したものです。

(構成=渡辺一朗)
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