11年ぶりに改訂された広報の指南書

日本という国は、外国からの見られ方を意識した「広報視点」に欠けるといわれる。国家と企業では異なるが、似た部分も多い。広報の本質は、危機対応を踏まえた「攻め」と「守り」のバランスだ。

広報・危機対応コンサルタント 山見博康氏
広報・危機対応コンサルタント 山見博康氏

本書は2009年に刊行されたロングセラーの改訂版。神戸製鋼所で広報部長を務め、独立後は広報・PR・危機対応コンサルタントとして活躍する著者が広報やPRのあり方を指南する。時代に合わせてSNSやインフルエンサーの活用法を加えるなど、旧版に比べ内容はさらに充実した。体系的に整理され、広報担当やメディア人が実名で登場する巻末付録も手厚い。

私自身も30年以上にわたり取材側と広報支援情報側の双方から広報業務と向き合ってきたが、広報・PR関係者の中には「木を見て森を見ず」のタイプも目立つ。「当社からこんな画期的な新商品が生まれました」と訴求するだけでは取材側の興味を引かないのだが、そこに気づけない。新商品という「木」を見るだけではダメで、本書でも触れられている通り「3つの品=製品の品質・社員の品性・会社の品格」といった「森」の視点や、「ブランドの本質をついた差別化と地道な情報発信がブランドを作る」といった「林」の視点が必要なのだ。