Win-Winの事業連携をいかにつくれるか
MaaS(次世代移動サービス)の社会実装を推進するMaaS Tech Japan(マーステックジャパン)は、石川県加賀市での実証で、地域の子育て世代への支援や、高齢者の免許返納後の暮らしの支援、さらに観光による来訪者の活動が最適化するようなモビリティーの検証を開始。また長野県塩尻市でも、地域コミュニティーと交通・モビリティーが連動するような仕組みを実装している。
人々の生活の質を高められるように、データによる可視化を行いつつ、モビリティーと他産業を組み合わせたサービスを創出する試行錯誤を、様々な地域ごとに実践していくべきだ。そして、生活の質を高められるモビリティーサービスのパッケージを、世界に先駆けて確立していくことが日本にとっての勝ち筋になる。
「便利」のためだけでは人は動かない
◆勝ち筋②:「共助」の異業種連携の推進
協調と競争のメリハリをつけた「共助」の異業種連携によって、「よそもの排除」の壁を乗り越えていくことが日本の第2の勝ち筋だ。
これは、勝ち筋①で言及した、生活関連サービスとモビリティーサービスを掛け合わせた新たなサービスを、Win-Winとなるような異業種連携によって創出していくことを意味する。
この際、単に便利になるからといって、生活関連サービスプロバイダーがもうからないのではサービスは広がっていかない。そこで、継続的な発展のために必要となるデータ基盤を整備して、生活関連サービスの需要データや移動データを複数の事業者で連携する。その上で、集まったデータに基づいてモビリティーサービスを最適化することで、生活関連サービスでの集客増やモビリティー費用の削減などの経済効果の創出を狙う。
このようにWin-Winの異業種連携を構築していくことがポイントだ。
米国通院配車サービスの成功例
こうした「共助」の異業種連携の実践事例を紹介しよう。
米国では、医療機関への訪問に困難を伴う人が600万人おり、受診ロスによる経済損失が1500億ドルと試算されている。これに対し、大手ライドシェア企業が米国の特定の医療機関向けに病院予約システムと完全に連動した通院配車サービスを提供したことにより、年間で約7万件の利用が達成され、さらに輸送コストなどが約40%削減された。
モビリティーサービスによって収益増とコスト削減の双方が達成された形である。
また、日本での萌芽ともなる取り組みとしては、「クックパッドマート」の事例がある。
これは、料理レシピサイトと食材提供者、受け取り場所(スーパーマーケットやコインランドリーなど)の3者がどの食材をどこに移動させるべきかの情報を連携して、レシピサイトの利用者に対して、作りたい料理に応じた食材を指定されたポイントまで配送するというサービスである。
利用者は自宅近くの指定可能地点まで運ばれた食材を取りに行けば、配送料無料で受け取れる。自宅までの配送は有料となる。クックパッドの調査では、珍しい商品が購入できる、お店で並ばなくても買い物ができるので便利といった利用者の声も得られている。