「子育て支援策」になっていない
児童手当廃止の問題は、このように実はそれほどお金持ちではない年収1200万円の家庭をさらに苦しめることになるということだけではありません。
実は優秀な子どもを育てるためには、お金のある人がお金をたくさん使って子どもを育てたほうがよいのです。
なぜならお金があれば塾に行かせることもできるし、普通の公立学校よりはきちんとした私立の学校に入れたほうが、優秀な子どもに育つ確率が上がるからです。
そして優秀な子どもほど、将来たくさんお金を稼げるようになり、優秀な納税者になる確率が高いのです。
ところが、児童手当を廃止してしまうと、年収1200万円くらいの家庭では、生活が苦しいので2人目の子どもを作るのをやめようとか、あるいは子どもそのものを作るのをやめようと考えてしまいます。
つまり年収1200万円くらいの家庭では、政府が「子どもをそれ以上作らなくてもいい」というメッセージを発していると感じてしまうわけです。
政府としては将来の優秀な納税者を生む芽を摘み、長い目で見れば自分で自分の首を絞めていることになってしまうわけです。
「億単位の金融資産を持つ人」は絞り取られない
そもそも年収1200万円を稼いでいる人は、管理職クラスで、残業手当もないけど毎日一生懸命働いて週末も仕事のことを考えているような、頑張っている人たちです。
本来はそういう人たちが安心してガンガン子どもを作れるくらいのお金を渡さなければいけないのです。
実際、児童手当の廃止によって削減された公費は、年間で370億円程度と言われています。
13兆円の財政赤字に比べれば大した金額ではありません。
今の日本政府の政策に対して国民から不満が出るのは、こういうところにあるのだと思います。
一生懸命働いて年収1200万円くらい稼いでいる人からは搾り取り、その一方で、億単位の金融資産を持っている人たちは、それほど苦労もせずに稼ぎ、なおかつ政府から搾り取られないという構図が出来上がっているのです。